Cello Encore Power mono | 禁断のKRELL

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ハイエンドオーディオやヴィンテージオーディオを語っていきます。



Cello Encore Power monoⅡ 1993年 アメリカ ¥1,134,000




       世界遺産





希代の天才エンジニア、トム・コランジェロ自ら、


「アンコールパワーが最も音が良い」


そう云わせしめた名匠の情熱的結晶、

天才の遺した最後のレジェンダリー、


増幅段はモトローラ製バイポーラトランジスターが1ペアのみ、
ようするにたった2個のデヴァイスしか使われていない。
シングルプッシュプルというシンプルでピュアな半導体アンプの形。
AB級としても極めて小規模構成ながら、カットコアトランス、そして
チョーク・インプットトランスに支えられた強力な電源部、
そのコンストラクションからは俄かには信じられないスケール感、
計り知れない底力と際立ったその実力を、筆者の目の前で顕示してみせた。



第一印象は、"凄音" そして"凄美音"にまず驚くことだろう。


小振りなコンストラクションなのに、七桁を越えるハイエンドである。


「高価な投資をするのだから、」
「普及価格帯の製品とは、決定的な違いがないと困る」


そうした向きの要求は軽々と叶えられる。異次元的な、"凄みのある音"は、
過去40年間、現在まで連綿と続くレビンソンのサウンド世界を継承している。
見事に達成された究極の純度!超絶High Definition(高分解能) 音質である。
初代アンコールパワーが持っていたアイダー羽毛を思わせる
柔らかなタッチは失われ、ピアノの打鍵のアタック感は強靭(!)で
非常に力感に溢れた音だが、けっして武骨にはならず、
極上の質感はいかなる時も揺るぎがない。初代の線が細い佇まいの音とは
大きく変化し、音に大変な太さがあり、濃厚な表現力を身に着けた。
初代が持っていたおだやかで淡い光沢感のある音の艶やかさと、
情緒的な音のソノリティを継承しつつ、音楽を躍動的に激しく描写してみせる!
極限にまで研ぎ澄まされた鋭利な剃刀を思わせる輪郭の切れ味、
それが彫りの深さと "凄み"を伴って空間を深々と切り刻んでいくさまに、
ぼくは言葉を失った。音楽の細部に焦点を当て拡大したような緻密さは、
"精緻"というタームを具現化するような製品だ。ピアニッシモの再現性
はこの上ない繊細さ、やさしく甘美な楽曲は心に深く浸透するような
求心力で持って、貴方を官能の夢心地に誘う。
その色彩感は大変色濃く、積極的な演出を伴い音楽を奏でる。
色彩はレッド、そしてダークが混然一体となって混じり合う。
そして、全体として僅かなエコー感を付帯音として伴う、


それは音楽の持つ熱気、音楽家の"情念"を表現したもの。







驚異的なポテンシャルを小さな体躯に内包した、他社すべての製品を
遠く彼方に置き去りにする、そんな高次元の製品。他者と隔絶したレベル
の違いに慄然としてしまう。これは、まったく言い過ぎでもなんでもない。








倍音の"魔術師"



ストリングスの倍音は波紋となって空気を伝わり、直接大脳に作用して
感性を麻痺させていくようだ。 まるで麻薬のような蠱惑的な音色。
ディーヴァが嫣然と囁きかける、やさしく耳をくすぐるウィスパーヴォイス、
なんという魔性の音色、インブルーリアがブレスを継ぐときの、
濡れた口腔内の艶めかしい質感、これほどの生々しいヴォーカルは
聴いたことがなく、まさしく生以上の音が出ている。
なんという美しい音なのだろう・・・・・!それでいながら、
ジャズのビッグバンドの再現性も見事と云う他のない、
すばらしいプレイバックで楽々とこなす、やさしさも峻厳さも自由自在、
もはや信じられない表現力の幅の広さと柔軟性、そして懐の深さ。







比類なき美しさで空間に拡散していく、微粒子的ソノリティの見事さ、
音楽を通して、マークレビンソンの創造した高邁な精神世界を仰ぎ見る感覚、


初期クレルの音には、"魂が浄化するような"強大なカタルシスを感じた。
音楽を聴いていて咽び泣くほどの感動があったのだが、
Cello Encore Power monoⅡにはそうした情動は喚起されない。


そうではなく、まるで神へと近づく目に見えない透明な階段が、


眼前に天高く現出したような感覚に囚われていく。

そう、最上のアンプは、音楽を聴いていて "風景が視えてくる"。


ぼくはこの日、チェロの放つ神秘の音色の虜となった。








今までは、どんなに心酔するコンポーネントでも、音楽を聴いていて、
エクスキューズから逃れることはできなかった。


「ここが、もっとこう鳴ってくれたら・・・・・・」 どれほど佳い事か。


「世の中にはきっと、もっと素晴らしいものがあるのだろう」


そうした予感のようなものから逃れることが出来なかった。


Cello Encore Power monoⅡには、それがない。








唯一残念なのが、本当の爆音レベルの音圧を出すと
音像が崩れ、鑑賞に堪えられない音になってしまうところ。
これが本当に残念だ。パワー感、スケール感ともに十二分で
すばらしいのだが、ただこの一点だけはウィークとして残る。
とはいえ、K2での鑑賞後しばらく鼓膜がピーンと鳴るほどの
大音量でも破綻はみられず、本当の大爆音、大パワーを
必要とされる方以外は、Cello Encore Power monoⅡ
はすばらしい人生のパートナーとなることだろう。


貴方の人生をより豊かなものに変えてくれるほどの



"幸福感"、それほどの実感が得られることを、筆者はお約束する。



(Encore Power monoⅡとⅢの違いは天底板の厚みのみで内部は同一)




出力: 60W(8Ω) 200W(8Ωブリッジ接続時)
入力感度/インピーダンス:0.78v/365kΩ
寸法/重量 W240×H110×D338mm/6.3kg
フィッシャータイプバランス入力(2番HOT)
消費電力最大150W