KRELL KSA-50 インプレッションⅢ | 禁断のKRELL

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KRELL KSA-50 1981年 アメリカ ¥600,000




KSA-50は音楽のエモーション(アーティストの情念)を伝える能力に特筆すべき(!)魅力を感じます。
弾けるように躍動する音楽は、若々しく、初々しく、そして瑞々しい魅惑の表情です。
中低域を若干甘く、低音を豊かに鳴り響かせることで情緒や官能といった心を溶かすような
音楽の味わいを生み出します。やわらかく、しなやかで滑らかな音質は、女性のやわらかな肢体を
思わせるもので、初期のクレルのパワーアンプは女性的とよく評されています。KRELLのアンプなので
エネルギー感に溢れる力強い音がしますが、後年のクレルの製品のような力づくで捻じ伏せるような
強引さはなく、音楽の表情はとても「優しい」です。おっとりとした雰囲気です。ピュアクラスAの
特性である、高域の美しさに非常に優れており、その美しさは世界最高だと思います。
高域が太く、どこまでも高く伸びて、力強い高域の出方がします。これが若いボーカリストの声質を
思わせます。したがってマルチアンプの高域用としても最高です。とにかくこのアンプを通して
聴く音楽の魅力的なこと!音楽を通して精神が高揚する感覚が素晴らしいです!初期クレルの製品は
年代が古いので高い出力を得るために素子をパラレル(並列)に増やすことで純A級の100Wや200Wという
驚異的スペックの超弩級モデルを生み出してきましたが、これが音質を鈍く曇らせる結果となり、
音質的に一切の妥協のない設計で作られた、ラインナップ的には末弟である本機が(スケール感では
かないませんが) もっとも純度が高い"最高音質"を誇っています。初期クレルの中で一番音が良い
クオリティーの高いモデルです。また、大手メーカーの試作機は素晴らしい音がしていても、
ペーストハンダの量産型になった途端、音質が極端に低下するケースが多いですが、このKSA-50は
すべて手ハンダ、手配線で、創業者ダン・ダゴスティーノとミッチェルコッター社に勤務していた
夫人ロンディーの二人によって丹精を篭めて作られたフル・ハンドメイドの逸品ですので、
後期型のクレルとは次元が違う高音質を実現してくれます。若い方、キャリアのまだ浅い方は
古いモデルというだけで「問題外」と敬遠される方が多く、この現実にはとてもやるせない思いが
しますが、熱意を篭めて創られたものは、月日が流れても色褪せない魅力を持っています。
三十年ほど前のモデルですが、Mac A+ 2.0、ESS社上位DACチップ搭載DAC、さらにプリアンプを
最新型にすることで、全て最新型で固めた最新鋭システムと互角に渡り合う事が出来ました。
プリアンプの音質の鮮度を決定づける支配力は凄いものがあります。これにより、別物のように
「新しい音」になります。そしてKSA-50は、現代アンプには絶対でない音がします!追記すると、
このKSA-50と相性が非常に良いのがCOUNTER POINT SA-3000やSA-5000、GOLDMUND Mimesis 2、
7、7.5、SRなどの初期の一桁番台のムンドプリアンプ、この二つとの相性が最高でした。
鋭敏で研ぎ澄まされた硬質なレビンソンとは正反対の音のように思いますが、
初期クレルとMLASのレビンソンプリとの組み合わせは定評があり、Mark levinson ML-1Lや
JC-2との相性も素晴らしかったです。初期クレルの柔らかい音をマークレビンソンでもう少し
硬質な方向に持って行きたいときに良いですし、これらの組み合わせはお互いの主張が喧嘩せず、
上手く溶け合い、融合することで、素晴らしいシナジー効果(相乗効果)を生み出しました。
KRELL PAM-2との組み合わせでは澄み切った透明なサウンドステージに無垢で濃密な雰囲気
(オーラ)が立ち昇ります。PAM-3との組み合わせでは、エンタメ方向に大きく振られており、
基本性能やクオリティーではPAM-2、音楽の楽しさや色気ではPAM-3でした。スピーカーは
静電型はもちろん、英国の古典的スピーカーやコンプレッションドライバー+ホーンと相性が良いです。
JBLのホーンで鳴らすと濡れるような艶のある音がします。


またKSA-50はハイカレントケーパビリティ(高電流供給能力)に優れており、アポジーなど極端に
インピーダンスの低い駆動力を要する難物スピーカーを楽々とドライブする駆動力に優れます。
またこのモデルは抜群のリライアビリティ(堅牢さ)を有し、本当に頑丈で壊れる事がほとんど
ありません。(上位機種は放熱を考えないと故障の原因になる) 冷却ファンの音も1メートル
離れた試聴位置で無信号時でも気になりません。A級アンプの発熱に関しましては、空冷ファン
の排熱は底面吹付ですので、ラックに押し込めても問題ありません。(日常で意識することが
ないレベル)KSA-50mk2ではリレーが追加されましたが(ワイヤスプリングリレー)これが音質を
大きく劣化させます。電源投入時のポップアップノイズ(ボッ音)と電源OFF時にしばらく音楽が
流れ続ける(これらはKSA-50の仕様です)対策として追加されたのですが、安全装置というより、
アンプというものは電源投入直後に不安定になるのでその解消として、電源投入時に信号を
何秒か遮断する機能があるだけです。要するに音質面ではあきらかな改悪であり、
初期KRELLにこだわっている方は本機オリジナルのKSA-50を選択されています。


実効出力50W+50W 出力帯域幅20~20,000Hz SN比120dB 消費電力310W


寸法W483×H226×D480mm 重量24.0kg




再生動画①




再生動画②