長男と次男は同じ高校出身だ。
私の母校でもある。
長男の卒業と同時に次男は入学した。
高校が掲げる方針は
自主自立精神を重んじ、
自由闊達で、文武両道を是とする。
その為、部活動、体育祭、文化祭、クラスマッチなどの学校行事がとても盛んで、センター前日まで体育の授業もしっかりあった。
そんな校風なので、個別の進路指導では基本、どこでもご自由に受験してください、という風潮だった。
後期日程出願確認決定の為の三者面談の日。
先生がたは「第一志望はゆずれない!」という駿台予備校のキャッチフレーズと同じようなことを言っていた。
しかし、長男の担任は、第一志望に拘るよりも手堅く現役合格を狙っていくほうを選ぶタイプの考えだった。
同じく、今年で受験を終わらせ早く安心を得たいという親のエゴにとって、その指導は有り難かった。
前期日程の東大出願に関しては、本人の強い意志を先生も私も尊重し異論はなかった。
問題は、後期日程の出願先だった。
息子は、後期も東大出願を希望していた。
東大の後期は、かなり高度な総合的論述能力を要求される。
センター後の僅かな日数の付け焼刃でなんとかなるものではない。
息子の普段の作文能力、読書量などから考えて、論述の対策を全くしてきていない息子には大変厳しいと私は考えていた。
そういった理由で私は、後期は合格の可能性が高くなる他の大学に出願してほしかった。
とはいえ、息子の東大への拘りは理解していたので、仮に他の大学の後期が合格でも、浪人したいと言えばそれを一浪までという条件で快く許可するつもりだった。
息子も普段から「東大には、現役不合格でも一浪で絶対に合格してみせる。というよりも、一浪で決めれないようでは、その先更に浪人してもダメだと思う。それくらいの覚悟で俺は浪人するよ。」と言っていた。
この息子の言葉を普段から聞いていたので、矛盾しているが親としては一浪ぐらいは受け入れる心の余裕も一方で持っているつもりだった。
我が家の場合、現役時には私立受験は全く予定していなかった。国公立大学のみの受験。
そういう気持ちの受験生は、息子の学校には大勢いる。
秋の文化祭まで、3年生は全員参加で劇をクラス単位で作り上げるような学校なので、秋以降、受験勉強一色で頑張ったとしても、受験勉強をやりきった、もうこれ以上は無理という感覚が少なく、浪人して再勉強することへの余力を持っている生徒が多いのがその理由だと思う。
実際に卒業した浪人生たちは、現役生よりもかなり大幅にセンター試験の平均点をあげてくるというデータもあるし、リベンジに成功するものも多い。
そうは言っても、私は一年先のことを想像してみた。
現役時は国公立一本受験でも、心理的になんら問題ないが、浪人してその先が無いとなった時に、果たしてこのような余裕ある気持ちでいられるだろうか??と私は考えた。
東大は何と言っても難しい!
たとえ模試で好結果を叩きだし、過去問でも好感触を得られていたとしても不安は尽きないであろう。
ましてや、思うように成績を伸ばせるとは限らない。スランプもあるだろう。
そんな不安な浪人生が、後がないと決めた中で、論文形式のここまでやれば合格と言い切ることができない不確かな東大の後期に出願できるだろうか?
いや、きっとできない。
また、東大前期後期共に不合格なら、私立に行くしかなくなってしまうではないか。
そうであるならきっと、浪人しても後期は他の大学にどのみち出願したくなる。
このような、一年後の浪人生家族の心理面でのシュミレーションをしてみた結果、私が出した息子への提案はこうだった。
つづく