私が出した息子への提案はこうだった。
現役の今回、後期日程は東大以外の大学を受ける。
後期も不合格なら浪人。
あわよくば後期に合格しても、息子が入学したくないと言ったら、入学金を払って休学させてもらう。
その際は、中途半端な仮面浪人ではだめだ。
きっぱり休学して、予備校に通って背水の陣で再受験する。
そうすれば、一年後は、心置きなく前後期共に東大に出願させてあげられる。
一浪したら普通私立受験もするが、それも不要となるので、私立受験時の経済的、時間的負担もなくなる。
受験時の交通費、宿泊費などの費用や、仮押さえの私立への入学一時金などを考えたら、国立大学への入学金のほうが、安く済むくらいだ。
そして、何よりも親自身の精神が安定する。
息子を追い込むような発言をすることもなく、気持ちよく一年間、息子の受験勉強を応援してあげられる
(ここが実は一番重要)
以上
息子にとっても、受験に再度失敗しても通うことのできる大学があることは、精神の安定につながり勉強にとってもプラスに働くだろうと私は考えた。
この点に関しては、人間は追い込まれて初めて火事場の馬鹿力を発揮するものだ。それでは詰めが甘くなるだろう、という批判も出てくると思う。
しかし、休学してまで東大に掛けているのだから、浪人して東大に受からなければ1年を棒にふったことになる。
これは立派な自分への追い込みになるし、息子はそんなことで気を緩めることはない。息子なら大丈夫という信頼も私にはあった。
一方、今は息子は東大しか見えていなくて視野が狭くなっているが、人間に心変わりは付き物だ。
入学を許可してくれた大学にいつの間にか心が傾いていくこともある。
と、こんな風に私は内心考えていた。
親の誘導は、このようにして始まった^^;
問題は、私のこの提案に対し息子が、
「もしもそうするなら、北海道大学に出願する」と言い張ったことだ。
北海道大学は、息子の志望する学部学科の中では、後期日程の中で東大を除くと、一番偏差値が上だった。
京都大学の前期と同じ偏差値だったと思う。
それでは、確実な滑り止めにはならない。
三者面談で、担任と私はもう一ランク下の東京農工大学を勧めた。
しかし、息子は、「北海道大学以外は受験する気はない!そうでなければ、後期も東大に出願する」と三者面談の場で言い放った。
こうまで本人の意志が強いと、「それではそうしよう」と担任も私も同意するしかなかった。
確かに、前期どうしの偏差値で比較すると、北海道大学は京都大学よりも下だ。
京大に後期試験があったなら、京大に出願していたかもしれないような息子の勢いからすると、東京農工大学では満足いかないのも理解できなくはない。
「当たって砕けろだ。後期東大よりは後期北海道大学のほうが確実に合格に近づくはずだ。」
という気持ちに私もなって、覚悟を決めた。
とはいえ、急にふって湧いたような北大の情報を我が家は全くもっていなかった。
・・・・・・・
幸い、秋の遅い時期に、名古屋で北大が大規模な大学説明会を開いてくれた。
息子は、勉強時間を削ってまでその説明会に行く気は全くない。
私は一人で、北大説明会に足を運んだ。
個別相談で、休学の場合、前期の学費を納めなくても入学金納入だけで休学できることを確認した。
皆がこんなことを計画的にしたら、それは非常によろしくない事態なので、あくまでも一般論で不測の事態が起きた場合にはという前提で、質問する言葉には気をつけたことは言うまでもない。
しかし、仮面浪人は少ないとはいえ実在するし、様々な理由で休学の末の退学者も実在するのが大学というところなので、入学許可後は大学も個人の事情にあまり細かくいうことはないのだろう、と私は勝手に推測した。
・・・・・・・・・・
こうして、前期日程で東大に不合格になった息子は、例の東日本大震災当日に親子で北海道入りした。
波乱に満ちた後期日程の年の受験を、息子たちの学年はむかえることになってしまった・・・