Red Mitchellの良さを教えてくれたのは、間違いなく大学の先輩ベーシストの
田中さんだ。
僕はその当時全く別の路線を見ていたから、Red Mitchellの良さを本当に理解
していなかったんだろうと思う。何枚か貸してもらったCDやテープは今でも記念
に取っている。
今だから思うのは、先輩や他の人たちのように演奏家としてトレーニングされて
いる方の耳の出来や音楽への理解度の差が大きかったということだ。
改めて「音楽がわかっていなかった」ことを痛感する。
大堀博士が貸してくれた、Jerry Dodgeon Tommy Flanagan Red Mitchellの盤
も最高。そして、今回紹介するこの盤も、Hank Jonesの追悼の意もふくめて、
ご紹介したい。
Bill Evans,Hank Jones,Red Mitchell / Moods Unlimited
1.Yesterdays
2.There Is No Greater Love
3.All The Things You Are
4.In A Sentimental Mood
5.Night And Day
Bill Evans(ss、ts)
Hank Jones(p)
Red Mitchell(b)
Rec. Oct.28&30,1982 @Pethouse Rec. Studio, N.Y.C.
僕は、このCDのライナーノーツがとても好きだ。
西間木洋子さんという方の、スイングジャーナル誌(悲)のレポートからの
転載というこのライナーは演奏もする僕にとってはとっても興味深いもの
だった。
サックスのビルエバンスは、当時ピアノのビルエバンスが他界しその生前
の作品のブームに隠れてその実力にも関わらず不遇だったと思う。
マイルスデイビスのグループでも活躍した彼は最高に格好いい。
「あっという間に時間が過ぎるアルバムはいい」
と昔から思っている。が。これもそれにあたる。
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そうそう、ライブでの出来事。
チェロチューニングをしているレッドミッチェルのようなハーモニーは普通
のチューニングのベーシスト(99%のベーシスト)では出せませんから!
あしからず。
(佐久間さん、好きだって言ってたけど、プレイは全然違いますね、なんて
言われちゃうので・・・。チューニングだけでなく、比較なんて滅相もないし
、、、そもそも私うまくないですから!《怒》)
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さて、さて、気を取り直して、大好きなライナーはこんな感じ。
(これ以下はマニアックな方向き)
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1日目はお互いを知るために多くの時間が費やされ、レコーディングしたのは
<イエスタデイズ>1曲にとどまった。2日目は、日のあるうちにということで
まず写真を撮ったが、ハンクは”スマイル!”という注文に歯をむき出しにして
見せたり、『この柵(バルコニーの)は古くてボロボロだから、よりかからない方
がいい。生命保険もかけてないことだし。(笑)』などとおどけてみたり、カメラ
マンの道具について専門家なみの知識を披露してゴキゲンだ。レッドはさっき
立ったまま急いで食べたハンバーガーを胃に流し込もうと(?)、ブラッディー
マリーを呑んでいる。ビルは2人の大先輩に囲まれ、言葉少なめに微笑んで
いる。
(中略)
2曲目は<オール・ザ・シングス・ユー・アー>。ハンクがこの曲をボサノバの
リズムで演奏したのはこれが初めてだということと、ビルの演奏をレッドが大い
にほめていたことだけを記しておこう。
(中略)
私はこのレコーディングの10日ほど前に、ビルがミロスラフ・ヴィトウス、
アンディ・ラバーン、マイク・ハイマンと一緒に『セブンス・アベニュー・サウス』
でコンサートをやった時に、彼がテナー・サックスでこの曲のソロをやったのを
聞いているが、
(中略)
最後の曲は<夜も昼も>になった。それまでどの曲ついても特別な説明とい
うものはなかったが、この曲に関してはレッドが時間をかけて曲の持つエッセ
ンスを説明した。彼によれば、この曲のキャラクターは”突然のコード・チェン
ジ”にあるという。そこで彼は出だしの4ノートをベースで強調した。ソプラノ・
サックスを使おうとしたビルにレッドが、『これはテナーでやってほしい』とリクエ
ストし、メロディーを確かに記憶していないらしいビルに、レッドとハンクが<夜
も昼も>のメロディーに起こる微妙な違いを説明し、ピアノやベースで説明し
足りないと思ったのか、しまいには二人で歌まで歌いだした。それまで大先輩
達に敬意を表しながらも対等にプレイし、選曲に関して堂々と意見を述べたビ
ルが、ここでは先生から教えを乞う生徒のように懸命な表情を浮かべている様
子がほほえましかった。
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まるで、録音スタジオにいるかのような、実況レポート。
個人的には、ヴィトウスのIn A Sentimental Moodが聞きたいという気持ちも
あるが、その人の歴史とかは入らないから。こんなことを描いてくれた西間木
さんに感謝だ。