たまにはあの女の子達みたいに

可愛くて素直で、そして少しばかり媚びることも出来るような。

そんな女の子になりたいって思ったりもする。

けれど私は私で、そのことは変えようもないの。

それならばせめて、私らしいままで・・・。

 

  lovesickness~番外編~

 

コホッコホッ

 

「あー先生ぇ風邪ぇ~?」

「大丈夫ー?医者の不養生だねぇー。」

 

いつものように中庭で女生徒に囲まれていた弁慶は、

生徒達のそんな台詞を聞くと少し困ったように笑った。

 

「そうかもしれません。皆さんにうつしてしまっては大変ですから、

こじらせる前に早く治さなくてはいけませんね。」

「あはは、そしたら私先生ぇの家行って看病したげる。」

「あーずるい私も私も。」

「嬉しいな、有難うございます。・・・さぁ、もうそろそろ教室に戻らなくては、

あと五分で授業が始まりますよ。」

 

キャーキャーと面白そうに騒ぎ立てる生徒達にそうやんわりと告げると、

一人がポケットから携帯を取り出して げ、ヤバっ と大げさに声を上げた。

そうして、そろってばたばたと慌しく校内に戻っていくのを笑顔で届けてから、

弁慶は小さくため息をつき、またその場で激しく咳き込んだ。

 

ゲホッゴホッ・・・

 

咳き込みようが、先程よりも比較するまでもなく酷くなっている。

痛むのどを右手で軽く押さえると、妙にイガイガしたその感じが不快で苦しかった。

生徒の手前我慢していたのだが、完璧には無理だったかと自嘲気味に笑う。

熱もないしだるいわけでもないからと、薬も飲まずに放っておいたのがやはり仇となったのか、

のどの薬位は飲んでおくべきだった。これで生徒にうつしてはシャレにもならない。

 

「(でも、結構痛むな・・・。)」

 

学校の備品を使うわけにもいかないので、とりあえず帰宅したらまず薬を飲もうと心に決めて、

これ以上悪化する前にと自分も校内に足を向けた。

と、その時。

頭上から何か小さなものが落ちて来て、弁慶の頭に見事こつんと軽々しい音をたてヒットした。

とっさにその落下物を目で追うが、その正体を見つける前に今度は視線を頭上にやる。

その視線に気がついて、様子を見ていたらしい人物がすぐさま教室の奥に顔を引っ込めた。

 

「(あれは・・・)」

 

あらためて足元を探すと、そこには飴の袋が一つ。

はちみつきんかんのど飴』とだけシンプルに黄色字で書かれてあるそれを、

弁慶は驚きの表情で拾い上げた。

手に取って少しの間それをまじまじと見つめてから、

ようやくそれが何か分かったとでもいうように ああ と小さく声をもらす。

そして照れたような、とても幸せそうな笑顔でそれを握り締めると、

大切に白衣のポケットにそれをしまいこんだ。

 

これの落とし主はバレてはいないと思っているかもしれない。

でも弁慶には分かってしまったのだ。

その素直じゃなくて、優しい優しい犯人が。

 

表情までは見えなかったけれど、あの一房見えた揺らぐ紫苑。

あのような美しい紫苑色の髪の人間を、

弁慶はこの校内でも、今まで出会った人の中でさえ、一人しか知らなかった。

そして、こんなことをするような人も。

 

「有難う、ございます。」

 

きっと届いてはいないだろうけれど、弁慶は心を込めてその言葉をつぶやいた。

 

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番外編でした。本編書けよって話ですね。ええハイ。すみません。

察しの通り私は逃げております;だって文章が書けないんですもん!!(だってという言い訳は醜いね!)

これはまだ一話の前の話のつもりで書いたので、望美ちゃんは弁慶さんが好きではないです。

・・・が、しかし、冒頭の文章は明らかに恋心だよなぁと書いてから気がつくしまつ。

でも私の中の望美ちゃんは、好きになった相手にはぶっきらぼうで手渡しするんじゃないかと・・・。

まぁ好きだろうがどうでもいいです。番外編なので、あくまで。

ゲームの印象では相手によって多少媚びている感は否めないんですがそこはネオロマご愛嬌v

でもちょっとこういうシチュエーションというか、って萌えだなぁ・・・と。

趣味に走った作品でした。お粗末さまです。