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長い人生の1ページ、特別な日、忘れたくない「日」がある...





そんな感じの百年文庫です^^





まずは戦後を代表する私小説家の一人、尾崎一雄。





自分が小説家などという職を選んだため、子ども時代に苦労してしまった一人娘。





彼女の嫁入りが決まり、主人公は旅たつ娘を送る父の感慨に耽る...という「華燭の日」。





ストーリーとしてはよくあるものなんだけど、子ども時代に苦労させてしまった娘、というところがキーポイントですね。





彼女の妹であり、「ずうずうしくわがまま」な次女が嫁入りするのだったら、こういう味わいのストーリーにはならなかっただろうし。





涙なみだってわけじゃないけれど、しみじみとした感動を呼ぶ短編でした。





次に同作者による「痩せた雄鶏」が続きます。主人公は「華燭の日」と同じ小説家の緒方。





家族や周りの人に心配をかけて小説家を志し、やがて得た嫁も子どもも苦労をさせてばかりのわが人生...





言う間でもなく作者はこの主人公にわが身を重ねていますね。





「あひると白鳥とは別物だということ、あひるならあひるで、どこまでもあひるらしく」なんて一文が、心に残るなぁ^^





「上手い小説」じゃなくて、きっと「いい小説」を書くというタイプの作家様なのでしょうね^^





続いてこれも戦中・戦後のプロレタリア作家・高見順による「草のいのちを」。





知人宅を訪れた作者が出会った、戦争によって希望を失い、やさぐれている若者と、





彼とは対照的な、女優を志す若い女。





二人の若者の姿に触れ、主人公は戦争が終わり、新たな時代が始まるということを、ひしひしと感じます。





ラストに書かれる「われは草なり伸びんとす」...と始まる詩が、アツくていいなぁ^^





この時代を経験してないしよく知りもしない人間の心も揺さぶる、アツい快作。





ラストは18世紀末から19世紀にかけてのイギリスの作家、ラム。





気苦労ばかりの勤め人として過ごした数十年、それがある日突然終わり、年金生活者となった男を描く「年金生活者」と、





主人公と従妹が陶器の話から、過ぎ去った貧しい時代の幸福をなつかしむ「古陶器」の二つの好短編。





バリバリ働いていた人が引退してから毎日の過ごし方に困るっていうのは、現代でもまったく変わらないお話ですね^^;





お金があることではなく、お金がないことなりの幸せを感じさせてくれる「古陶器」も心に染みるいいお話^^





評価は☆4つ。この百年文庫は、しみじみ心に染みるような「いい話」揃い。





読後感がいいものばかりです^^