こんにちは。元ヘッジファンドマネージャーで、今は資産運用アドバイザーをしている株のプロ「E氏」です。
私は先月から「年明けから地合が変わるかもしれないので、年内に利食いしろ」とか、今年になっても「年初から注意しろとか地合が変わった可能性がある」といった弱気の見通しばかり書いていますが、多くの方はそんな見通しに違和感を持っているかもしれません。
これだけ上がった日本株ですが、このところ相場水準(立ち位置)に慣れてしまったので、今がもしかしたらとても高いところにあると忘れてしまっても仕方ないでしょう。
こういう場合はちょっとした下げには抵抗力がありますが、しかし、それは一見すると抵抗力があるように見えるだけで、実はリスクに脆いだけのことが多いです。
なぜか?
実は「多くの方は気付いていないだけで、実は今の立ち位置に不安を覚えている」のです。
「俺は別に不安は感じてない」と思うかもしれませんが、みんな実は不安なのです。
「勝手に決めつけるな!お前が市場参加者全体の心理状態が読めるはずがない」と思うかもしれませんが、実はある程度は見え、私はそれをずっとウォッチした上で言っているのです。
今日はみさんにもそんな結果を見ていただきたいと思います。
みなさんはGoogleトレンド
という検索サービスをご存知でしょうか?これはあるキーワードで検索した数の時系列チャートを見せてくれるなかなか愉快なサービスです。
ここで、「株価 暴落 」で検索してください。すると、こんな結果になります。
あれあれ?堅調な相場でみんな強気のはずなのに、このところ「株価/暴落」で検索している数が増えているではないですか?(誰がやっても同じなのでみなさん自身でやってください)
チャートの山は、
A:去年5月のショック
B:超円高と欧州ソブリン危機
D:東日本大震災
G:リーマンショック
07/8:パリバショック(サブプライム第一弾)
06/1:ライブドアショック
です。
そして、昨年5月の急落時に跳ね上がって徐々に下がり出していた検索数が最近またどういうわけか徐々に上昇しています。しかし、株価/下落 ではあまり増えていません。
なぜこのところ「株価/下落」ではなく「株価/暴落」の検索が増えているのでしょう?
みんな強気に見えるけど、「実は気付いてないだけでこっそりと暴落の検索をしている」のです。
みなさんも気付いていないだけで、深層心理では不安なのでは無いですか?
相場水準自体が高くなるとパニックになりやすいというのは、去年の5月の急落時の検索を見てもわかります。
去年5月の急落時の検索件数は100年に一度のリーマンショックや東日本大震災時より多いのです。つまり、高い相場水準でどこまでも行けると思っていた状態だと、ちょっとした変化で脆く崩れてしまうのです。
これが、私が冒頭で言った「堅調相場の立ち位置に慣れた気でいると、一見抵抗力があるように見えるが、実は違って抵抗力が欠如している」という事なのです。
そして、相場水準が上がると「株価/暴落」といったネガティブワードの検索が増えるということは、「表の心理では、慣性で強気の投資行動をしていながら、一方、本人が気づかない深層心理では立ち位置の高さを気にしている」という事です。
今この瞬間も、「自分で気付いていないだけで、不安になっている」人が増えているのです。
逆に、そもそも株価の水準が低いときは、「株価/暴落」はそれほど検索件数が増えてませんよね。
そうです。そもそもの立ち居地が低いと(みんなが思っている以上に)抵抗力があるのです。これが一般的に、みんなが期待していないとネガティブサプライズがおきにくいと言われている事です。
次に「株価/上昇 」で検索をかけてみましょう。
すると、今度はリーマンショックや東日本大震災時などの相場暴落時には検索件数が増えているのです。これは、一見すると総悲観に見えますが、これ以上の暴落より上がる可能性を探し始める人が徐々に増え出しているということです。
最近では昨年5月に大きな山が出ていますが、この検索数は月単位の集計なので、5月下旬の急落の前の検索数も入っているのでなんともいえません。
そして、この「株価/上昇」の検索結果は、最近も少し増えているのです。
つまり、今は「強気の検索も増えている」し「暴落の検索も増えている」のです。
要するに、見方が分かれてきている、煮詰まっているという事ですが、興味深いのは「上より下の値幅を気にしている」のです。
「上昇」の反対は「下落」なのに、なぜ、「下落」という検索件数より「暴落」の検索件数が多いのですか?
こういう時に不幸にも大きなイベントが起きると、過剰に反応しやすくなってしまうのです。これが、「突発的イベントに対する抵抗力の欠如」となってしまうのです。
つまり、本当に急なときは、抵抗力が欠如云々の前に思考停止してしまうのです。この場合、我に帰ると、慣性で元のように買い始めるかもしれないので、パニックは一時的で済むことが多いです(何しろ、深層心理に不安がたまってなかったので)。
一方、抵抗力が欠如するというのは、実は一人一人知らず知らずのうちに不安になっているのに、それに気付かずに過ごしているときです。
こういうときは通常の調整ですと、直近数ヶ月の立ち位置の安定性に拠る慣性(表向きは相場が落ち着いてからの立ち位置しか気にしない)で行動してしまいます。まるで、トルネードになっているバラクーダの群れのようにグルグル回る行動を慣性で行っているのです。
そして、こういう時はちょっと下がると、「安くなったから買おう」というアクションを慣性で行うので、一見すると打たれ強い相場に見えてしまいます。
しかし、本当にショッキングなイベントが起きると、もともと深層心理で不安を感じていただけに、激しく狼狽したアクションになってしまうのです。
つまり、深層心理で不安が高まっているときの方が、近い将来にボラが出やすいのです。それも下方サイドにね。
これを私は、実は抵抗力が欠如しているのに、参加者の多くは気付いていないと言っているのです。
こんな検索結果は「たまたまだろ?」と思う方は、では「日経平均/2万円」、「日本株/大相場
」、「日本株/見通し
」や「中国/バブル」などを入れてみると良いでしょう。
「正直ですね~」
「暴落の検索件数は増えている」のに、反対の言葉である「大相場や2万円という検索は結果を出す数にも満たない」ですね。そして、「見通し」の検索数が増えているのは先行き不安だからでしょうね。
こうして見ると、さきほど「株価/上昇」で最近の検索が増えているのも、強気な見通しによるものではなく、実は「本当にもっと上がるのかな?」という懐疑的な見方で検索が増えているだけかもしれませんね。
みんな口では強気のことを言っているけど、実は密かに逃げ場を探してるのでは無いですか?口車に乗せられて本当に強気になっているのはみなさんだけかもしれないのですよ。
今日は、参加者自らが気づいていない今の深層心理をちょっとお見せしました。
ヘッジファンドはもちろんこういう分析をします。
そして、集団の無意識下の不安がもうちょっと高まってきたときに、イベントにかこつけて売り崩すのです(パニックなんて簡単に引き起こせるんですよ)。個人投資家の狼狽売りを誘うことなんて、赤子の手を捻るように簡単なのです。こういうときは、ボラが出るので、大儲けし易いのです。
だから、私は散々、今年はでかい上に影響が予測困難なイベントが多いので、用心しなさいと言っているのです。
(はっきりと地合が変わったとは言ってません。なので、ショートを振れなんてことは一度も言ってませんよね。年内のうちに利食いして様子見したらどうか、年が明けても直ぐに買わないで、地合が変わったか様子を見てはどうですかと言っているはずです。そして、その理由の一つが集団の深層心理で溜まっている不安感なんです。)
このGoogleトレンドは、集団心理の分析をするのに有効なので、みなさんも気付かない自身や参加者の見方のチェックのために使ってみると良いでしょう。
(終わり)
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