特定する意図は無いのですが、同業の知人より聞いた話です。

 

少し前に新たな事務員が入ったそうです。その方は、特許関係の業務は経験が無かったのですが、経理の経験は豊富で、経理を中心に徐々に特許関係の手続の方も覚えてもらっているそうです。

 

勤務態度は非常に良いそうです。割と、この業界に長い方だと、擦れている人が多く、指定された仕事以外はやりたがらない場合も少なくないのですが、雑用から本来の業務まで、積極的に引き受けてくれるそうで、心証としては極めて良いようです。

また、笑顔でハキハキと対応してくれそうで、基本的な態度としては申し分無いとのことです。

 

しかし、最近、思いもよらぬ問題が生じてしまったそうです。

それは、特許庁からの電話連絡への対応についてです。

 

業界外の方からすると、ピンと来ないかも知れませんが、我々の業務では、書面で通知する前段階等の位置付けで、特許庁の担当官から電話連絡があったりします。その際に、担当官としては、事務所の実情は知らないので、電話で出た人に、いきなり内容を話そうとすることも珍しくありません。

そうした場合には、(案件を担当した者等の)解る者に伝えることとして、事後的に対応することでよいし、そもそも、よく解らないことに対応して巻き込まれたくないでしょうから、自然と、そう言うやり方をする筈なのです。

 

しかし、その方は、良かれと思ったのか、頑張って自分で対応しようとしたようです。担当官側は、電話の相手が対応しようとしている以上、内容が解っていると思うでしょうから、「優先権」だとか「特別授権」だとか、もちろん我々は解りますけど、まだ慣れてない方では、意味不明な用語の連発して来られ、その方は事あるごとにキョトンキョトンして、聞き返したりしたようです。

結果、(その担当官の寛容性の問題もありますが)しびれを切らしてしまったそうで、他の方に代わってもらうよう要求され、フォローに入った方が、関係無いのに、担当官から「オタクの事務所ではどう言う教育をしているのですか」との趣旨のことを言われ、いわばトバッチリを受けてしまったそうです。

 

しかも、そういうことがあったにも関わらず、その3日後に、また別件で、特許庁からの電話に自分で対応しようとしてしまい、後で、その事実を知った案件担当者が対処に困ったそうです。

 

恐らく、その方は、良かれと思ってやったことなのでしょうが、電話で言われたことが解らずに誤った手続をしてしまったら、その手続は却下になってしまいかねず、そうなったら顧客に多大な損害を被らせてしまうことになります。

 

冒頭で、業界慣れしている人は、指定されたこと以外やりたがらない傾向があると述べましたが、それは擦れているのが大きいのでしょうが、ともすれば難解な法律行為を伴うことで、下手に知ったかぶりをして対応をして間違えていたら、大変なことになりかねないのを知っていて、敢えて理性的に、そうしていると言う側面もあると思います。

 

笑顔でハキハキとするのは、そりゃコミュニケーションの基本として重要は重要ですが、この仕事は、それだけで何でも許される程、甘くは無いのです。

 

それに、20歳台や30歳台半ばぐらいであれば、そう言った若さゆえの勇み足と言うのも、よくあることだと思います。

しかし、その方、40を過ぎており、もう知ったかぶりが良くないことぐらい認識しているべきなのです。

 

穿った見方かも知れませんが、そう言った対応をしてしまうのは、その方が良好な態度の裏で、変なプライドを持っており、特許の仕事なんて簡単だと思っている可能性もあり、そうだとしたら、他人事ですが、今後も、その知人はその方を要注意すべきだと思います。