AMHは卵巣老化を占う水晶玉か? | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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今月号のHuman ReproductionにAMHに関する面白い論文が掲載されていたので紹介します。

論文のタイトルは

「AMHは卵巣老化を占う水晶玉か?」です。

AMHに関して最近の数多くの論文からまとめているとても面白い論文ですが長くなるので以下に論文の要旨をまとめました。


いくつかの研究によるとAMHは年齢、FSH、エストラジオール、インヒビンよりも、卵巣機能のより良いマーカーであると示されています。

AMHは以下の点でとても優れています。

①排卵誘発の際に刺激に対する反応性を事前に予測する事が出来る。つまり反応性に乏しいLow responderのケースの予測や、逆にOHSS等の過剰の反応を予測する事が出来る。
②最も適した刺激方法を決める事が出来る。

③カップルへ治療前にカウンセリングを行い、十分な知識を付けた上で最適の治療法を選択する事が出来る。


最近の研究によるとAMHは以下のような指標としても調べられています。

①長期間の妊孕性(妊娠できる力)の予測:卵巣機能が減るリスクがなくどれくらい子作りを遅らせる事が出来るかの予測

②閉経年齢の予測

③今後抗がん剤の治療を行う予定の女性の卵巣年齢の予測

④卵巣手術後の長期に渡る妊孕性の予測

PCOS のスクリーニング、診断にも有用となる。


しかしエビデンスに裏付けされていない方法でAMHが広く使われると、患者を誤って安心させたり、逆に過度の不安を与える事になる可能性がある。

その結果、不必要な医療介入が行われかねない。

またそれにより多額のコストがかかる恐れがある。

AMHに関してより多くのエビデンスが判明するまでは、「AMHを水晶玉」として推し進めて良いか、その妥当性を様々なエビデンスから検討する事が必要と言える。


Anti-Mullerian hormone--is it a crystal ball for predicting ovarian ageing?

Loh JS, Maheshwari A.

Hum Reprod. 2011 Nov;26(11):2925-32.

AMHに関しては過去にもいくつか記事を書きましたので、良ければこちらも 参考にして下さい。