子宮内膜へ傷をつける事は有効か? | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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良好胚を移植しても妊娠に至らない場合、過去の学会報告や論文にて子宮内膜への損傷が着床率の向上へつながるという報告が出ています。

その一方傷をつけても実際には効果が乏しいという報告も出ています。

 

それをランダムに調べたメタアナリシスの結果が2015年のESHREにて発表されていたため報告します。

 

この報告によると7個の論文を集め集積して合計で810名の患者に研究を行っています。

406名のコントロール群と、404名の子宮内膜への損傷群に分けています。

 

その結果子宮内膜損傷群における妊娠率は34.6%(140/404)、コントロール群(損傷を加えていない)は22.7%(92/406)となり、その相対リスクは1.48(0.96, 2.27)となったものの、統計的な有意差は得られていないと報告されています。

 

つまり現時点では子宮内膜に事前に意図的に損傷を与えることで妊娠率があがるものの、統計的にはそこまでの差が出ていないということとなります。

 

2015 ESHRE O-029 

Endometorial injury:reflections about bias in meta-analysis