公務員になって、数か月たつと「こんなはずじゃなかった」と思う人が半数程度になる。この半数程度の、さらに半数程度は1.2年で離職する。その理由は「やる気がなくなる」からである。
「やる気が無くなる原因」は「志望した仕事内容ではない」がほとんど。これは「志望と職務のミスマッチ」などと言われる。そこで、志望動機に「間違い」があるとすぐに落とすようになったのが、15年前くらいからである。
それでも公務員試験で一次試験を突破のハードルが高かった時代は、「せっかく受かったのだから我慢して努めよう」と考える人もいた。しかし、「択一試験のハードルが下がると」再挑戦してみようと退職する人が増えたのが現在である。
では、志望動機の間違いとはどんなことだろう。現在は、「間違いをチェックするため」に出願時に書類審査を重視して、エントリーシートや面接資料を事前に提出させる。これは「書いた内容」で書類選考して、面接合否を決めるためである。
そこで、一例として、皆さんの志望動機で「超大地雷」をご案内しよう。これは、私立大学の学生はほとんどが知らないが、国立大学で1年生から公務員を目指して行政学などを履修している人は誰でも知っている。
それは、地方公務員と国家公務員の違い、立法・司法・行政職員の違い、都道府県庁と市役所(役場)の違いである。
受験生の志望動機には、私立大学生のほとんどが「住民のために〇〇」という記述を書くが、これがあるだけで、市役所志望であると断定される。その理由は、県庁が「企業の福利のため」にあり、国家公務員は「海外と国民との関係改善」が職務の中心だからである。 都道府県庁で「住民のためにする」職務は「間接的なものだけ」である。さらに国家公務員は「住民のためにならない仕事」をする。

"いわなくてもわかるだろう”というのが、日本の男子学生と高齢男性である。「テレパシー」のような以心伝心で相手に何かの情報が伝わると思うのは、漫画の見過ぎ。また、”想像してみればわかるだろう”というのは”試験”であることを忘れている。
「1+1=100」と書いても、「1+1=2 と書いたつもりだ」と言うのは、世界広しと言えど、日本男子のみである。

都道府県庁は、法人税が主財源(東京都は固定資産税も)となっていて、特に東京都は収入の7割以上が法人関連である。企業は複数の市役所から労働者を集めて雇用するので、その源泉所得税は、企業が多数の市役所に納税する。このため、企業の利益を考慮した行政を行うには「広域行政」を担う自治体が必要になる。これが都道府県庁の任務である。
例えば、企業が出すゴミは「事業用ゴミ」として廃棄物処理業者が収集するので、「ゴミを出す側、処理する側」の両方を管理するのが都道府県庁の環境局になるが、市民、区民のゴミは市役所、区役所のゴミ収集管理課が管轄している。したがって、ゴミでも企業と住民では扱いが違うのである。
このように、地方上級と言っても、都道府県庁と市役所では「対応する相手」が違う。企業の幹部や社長と対応するのが都道府県庁であれば、市役所は住民個人と対応する。仕事の内容も、扱う範囲も、業務内容も、またボキャブラリーも違うのである。
地方上級でも、都道府県庁と市役所では、求める人材も違うし、また、扱う仕事も違う。だから「住民のため」という語が提出書類にあれば、それで市役所志望だと断定され易い。つまり、皆さんが考えている仕事内容は「市役所・役場」であり、都道府県庁に努めるだけの力量も素質もないと思われてしまうので不合格になる。