以下、ネタばれ込みのライブ感想です。アメンバーの方でこれからオータムツアーに参加予定の方、ライブの詳細を知りたくないって方は注意してくださいね。


(MCは僕の記憶によるもので、大体こんなことを言ってたよーってくらいの再現なのでご承知ください)






とにかくこの夜、元春の喋ることがいちいち面白い。開口一番、《あァーー、、》と口にするだけで客は《また、何を言い出す?》という笑いが何も言ってないうちから起こる始末でした。




《この世の中には男がいて、、女がいて、その二つしかいない。仲良くやれることもあれば、上手くいかないこともある。でも、出来ることなら、、二つが上手くいく方がいい。、、僕は、、何年もかかって、上手くいくための秘訣を見つけたんだ。(客の笑い声に)可笑しくない!(キッパリ笑)。上手くいく秘訣とは、、二つのことを押さえることだ(客・おおー)。その二つを押さえてさえいれば、上手くいく、、、時には、、上手くいかない、、、(煮え切らない言葉にバンドメンバーも笑いだす。大声でさえぎるように》、僕は何年もかけて秘訣を見つけたんだ!(歓声笑拍手)。その二つとは、、、、(低い声で)、、食事と、、ベッド!)


「食事とベッド」


こう言うと、ちょっとこのタイトルがセクシャルに感じますね。前の曲「ポーラスタア」の勢いそのまま、この歌は楽しかった。アルバム『ZOOEY』の中では比較的小ぶりな佳曲といった印象でしたが、とてもライブ映えしていて盛り上がったのです。



そして、静かに元春がギターをつま弾き出し、歌いだす



「詩人の恋」


僕が今回のツアーで聴いてみたくて楽しみにしていた歌の一つです。目をつぶって、言葉を丁寧に紡ぐ元春の姿に、バンドの暖かな演奏にしみじみと感動しました。


アルバム『COYOTE』に「コヨーテ、海へ」があれば、『ZOOEY』には「詩人の恋」がある。二曲ともまるで終末の世界を俯瞰して見ていながら、運命に翻弄されていくような、ちょっと怖くて、そしてスケールの大きな歌詞が印象的な歌です。こんな歌を作ってします佐野元春だからこそ、いまだに僕の最大級のアイドルであり続けるのです。



《ありがとう!このバンドで『COYOTE』、、そして『ZOOEY』と二枚のアルバムを作った。そして今、三枚目のアルバムの制作をしている!(歓声)。来年は僕はデビュー35周年、来年中に新しい音をみんなの元にドロップできたらいいな、と考えています。そしてこのツアーでは、その新しいアルバムから何曲かみんなに聴いてもらおうと思う!(歓声)》


《最初に聴いてもらいたいのは、、、この歌、「君がいなくちゃ」!》



「君がいなくちゃ」


新曲とはいえ、元春ファンならこの歌の存在は以前より知っていた人はいたかも知れません。僕はyoutubeでしたか、ギタリスト小倉博和さんのラジオに元春が出演した時の音源を見つけて、聴いたことがあります。


「君がいなくちゃ」は元春が中学生の頃に作ったという楽曲らしく、この歌が小倉博和さんの学生時代のサークルで愛唱歌になっていたエピソードをラジオで告白し、元春の目の前で歌って聞かせたのです。


元春は最初《全く覚えてない!》と言ってたのが、歌が進むにつれ、《だんだん思い出してきた》と、一緒に歌いだしたのでした。


ラジオとライブの演奏を比べると、この歌、40年前のまんまじゃない。サビのコードがラジオではメジャーコードだったのに、なんとマイナーに替えられてました。そして格好良い“オー”のフレーズもそれまで無かったもの。ただの焼き直しじゃないとは、さすが元春なのです。


そしてもう一曲の新曲、「優しい闇」


ビートといい歌詞といい、まるでその後の「La Vita e Bella」じゃないか、と思ったのは僕だけでしょうか。明るい曲調のメロディにご機嫌なエイトビート、でも歌詞が、、うーん、ヘヴィですよ。端々に聞き取れる歌詞が、どうしても震災のことを歌っているように聞こえてしまう。ラ・ヴィータ~の続編?


畜生、声、小さい!歌詞がちゃんと聞き取れないじゃないか!ヴォリュームもっと上げろー!と心で叫びながら、他の客と共に拳を突き上げ、大いに盛り上がったのでした。カッコイイ。これはシングルに切るかも知れないですね。でも、タイトルの「優しい闇」はあまりキャッチ―じゃないな。



歓声の中、元春は何も言わずドラムの前のカバーにもたれかかり、照明が暗転したかと思ったら、あのバグパイプのメロディが聴こえてきて!観客は大歓声を上げます。


「ボヘミアン・グレイブヤード」


おおおお、この歌をライブで聴けるなんて。何年振りだろ、僕、SEE FAR MILES TOUR PartⅡ以来なんじゃないか。オリジナルキーだ。最高じゃないか。


間奏&エンディングのトロンボーンのフレーズはツインギターで奏でるのですが、なんとそこに元春がスキャットで加わって叫びまくる。それがまァ見事な歌いっぷり。


最後は“歌え”とばかり客を煽り、僕らももちろん答えます。《BON!!BON!!BO-BOBOBOBON!》の大合唱!

文句なしにこの夜のハイライトの瞬間でした。


曲が終わっても、客はおさまらない。興奮そのままに手拍子と《BON!BON!》の合唱が止まない!うおー楽しい!


元春が笑いながらその様子を見ていて、そしてらドラムの小松君が笑顔で手拍子にバスドラを合わせてきて


ふいに元春がバンドの方を振り向いたと思ったら、いきなり《ワンツースリーフォー!》。なんと、もう一回「ボヘミアン・~」のエンディングが始まったのです。なんてサプライズ!


すごいですよ。絶対に打ち合わせなしのいきなりですよ。目配せしてる暇だってあったかどうか。急な元春の合図に瞬時に演奏になだれ込むなんて、まるでジェイムズ・ブラウンみたいじゃないですか。以心伝心?すごいスキルのメンバーです。

(二回目のエンディングはさすがにグダグダでした。シュンちゃんバグパイプの音を準備してない?笑)


こりゃ何回でも《BON!BON!》を要求して、今のをもっともっと繰り返そう!と思った僕らの雰囲気をを察したかのように元春、キッパリと、《次の曲は、この曲!!》


「約束の橋」


おそらくキーは二音下げて、Gですね。コヨーテバンドの「約束の橋」はイントロからザ・フーみたいで、これは弾けるしかない演奏なのです。僕はコヨーテバンドの激しいイントロの「約束の橋」は大好きですね。会場の客ももちろん大合唱ですよ。



《どうもありがとう。みんな、、、凄いね!(歓声)。今日は00年代から最近までの曲をたくさん聴いてもらったけど、ここで、、、少しタイムスリップして、、、80年代の歌を聴いてもらおうと思うんだ!(大歓声)。》


ここで、この夜はじめて元春、お馴染みの赤のストラトキャスターを肩にかけます。僕なんてあのストラト見ただけで大興奮です。


《こうして見渡すと、デビューからずっと僕の音楽を応援してるって人も、来てくれてると思う(歓声)。女性はみんな、、お化粧が上手くなった(笑)。男性は、、、貫録が付いた(笑)。みんなで一緒にタイムスリップして、、僕の80年代の、、この歌を》



「悲しきレディオ」



大爆発です。飛ぶ、跳ねる、歌い叫ぶ。80年代より続いているレディオ投入の起爆剤は21世紀の今だってこんなにも破壊力がある。《まーたレディオかぁ?》なんてのは、この曲に関してはありえない。このイントロが始まって血が騒がない佐野元春ファンがいるはずないのです。メドレー部分に新しいアレンジも加わって、大変かっこいいレディオでした。


大盛り上がりで、本編終了。赤いストラトを高く掲げるお馴染みのポーズがいい。(背面の生木がむき出しになってるストラトが、もーうなんか堪らないですよ)。バンドメンバーを紹介して、ステージを去ります。



アンコール



再びステージに戻った元春。ゆっくりと感謝を告げて、いくつかのことを喋りました。


何を言ったか、記憶をしぼって書き出そうとしてみましたが、どうもうまく書けません。文章に起こしても、読み返して何か違う気がする。


デイジー・ミュージックの立ち上げの時のこと、そのデイジーミュージックが10周年を迎えたこと。


そして、少しだけ時事的なこと。


喋って、そして、《僕らが今、演奏する歌は、この歌、、、》



「サムデイ」

「アンジェリーナ」



この二曲を聴きながら、笑顔で元気に歌う元春の姿を観ながら、《あと何回、この歌をライブでこんな風に聴けるだろう》とか、考えちゃいました。何回と聴いてきたこの歌が、自分にとってどれだけ大事な曲か、かけがえのない、今この時も大事な瞬間だと、噛みしめて聴き、歌いました。元気でいなきゃいけない。元春より若い自分が、元春に元気で負けちゃいけない。


ストラトをかき鳴らす姿に狂喜し、叫んで、皆で一緒に歌って、終演。



終演?


終わり?まだまだやれるぞ。もう一曲あるでしょ?


元春がマイクを客席に向け、退場しても、アンコールの声が止みません。


客電着いた。客出しの音楽も流れ始めた。でも、まだ誰も帰らない。


客出し音楽のボリュームが上がろうが、客は負けじと元春を呼び続けます。



ひょっとしたら!ひょっとしたら!と思ったけど、


もう一曲、は無かったですね。



残念。



いやいやいや、火が身体についちゃって、もっともっとって気分です。もっともっと聴きたかったけど、まぁ仕方ないですよね。


初日に比べてアンコールが一曲少なかったのは、翌日が名古屋だから移動の新幹線の時間があったんじゃないの?という憶測もあったり、チケット代が安いせいだよ、という声もあったり(え?チケット代ってどの会場も一緒じゃないの?)、


でもそんなことはこの夜の本質とは関係ないことなのです。



良かった。メンバーの楽しそうな姿や、元春の汗だくのシャツ姿に、良いものを観た、素敵な時間だった!としか言えない夜でした。楽しかった。


いいなぁ、まだツアー二日目でこれだものな。明日の名古屋は、この先のツアーでどうなっちゃうんだろうか。観れる人たちがうらやましい。



スティーリー・ダンの「ドウ・イット・アゲイン」の流れる中、ドリンクを受け取って会場を後にしたのです。




拙い文章、長々と、失礼しました



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マシス