Q&A55 第Ⅻ因子低下 プロテインC活性低下 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 私は、流産後、東京都内の大学病院の不育症外来にて検査をした所、第Ⅻ因子とプロテインC活性の数値が低い為、バイアスピリンを処方されました。人工授精しているので着床期から服用するように言われました。素朴な質問なのですが、血液が固まりやすいのは卵胞を育てるのにマイナスにはならないのでしょうか。卵胞に血液が届かず質の悪い卵子にならないのでしょうか。

A もし、何もせずとも血栓ができてしまう程、血液が固まりやすい状況でしたら、肺梗塞、脳梗塞、心筋梗塞など生命に重篤な病気になってしまうでしょう。不育症の方の多くは、日常生活には支障はないけれども、妊娠を目指した時にだけ、子宮および胎盤で血栓が起きやすい状態と考えられます。その理由は、2013.8.16「☆プロテインS活性低下」に記載していますが、①子宮と胎盤は血流が遅い②絨毛(胎盤)細胞表面はもともと血液凝固因子が集まりやすい、ために血液が固まりやすい環境にあります。逆に言えば他の臓器では血液は固まらないことになります。したがって、卵巣への血流(血管)には影響ないものと考えます。

それでは、バイアスピリンをいつから服用したらよいのでしょうか。バイアスピリンを含む「解熱鎮痛剤」を非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs:Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)と呼びますが、NSAIDsはプロスタグランディン合成酵素であるシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害します。着床に重要と考えられているCOX2を阻害するのかしないのか、詳しく調べてみる必要があります。後日、記事にアップします。