Q&A1111 流産1回、TSH 2.71 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 夫婦とも41歳
40歳で結婚し、以降、排卵検査薬を使っての自己流タイミング法でトライするも、痛みのため性行為そのものがなかなか上手くいかず、不妊治療(人工授精)を開始。
卵管造影検査 異常なし、AMH 3.38、FSH 8.67、fT4 1.22、TSH 2.71、精液検査異常なし

1周期目から人工授精をしたかったものの診察の成り行きで叶わず、hCG注射+ルトラール服用でのタイミング法で、結果は陰性。
2周期目は凍結精子を使った人工授精+hCG注射+ルトラールで陰性。凍結精子の数値はかなり悪くなっていました。
3周期目は新鮮精子を使った人工授精+hCG注射+ルトラールで妊娠しましたが、7週目心拍確認後に稽留流産となりました。掻爬手術をし、次回はステップアップすることにしました。先生もそれを勧めてきました。年齢的にも体外受精にトライするべきだと。

プラノバール服用し生理が来てから、アンタゴニスト法で体外受精を開始。11個の卵胞のうち卵子があったのは4個のみ。3個が正常受精し3個凍結(8G3、4BA、3AA)。移植は生理を一回見送り、翌々周期に実施予定。

ここで気になるのが、半年前に検査したTSHの数値です。先生のブログ情報から、妊娠を目指す場合は2.50以下が望ましいと知りました。ブログを通じて知った多くの妊活同志の皆様も、確かにそのように仰ってて2.50以下になるようにお薬を服用されたりしています。私は2.71なので、若干上回っています。これが気になって仕方ありません。では何故今まで放置していたかというと、初診時に診察を受けた医師から指示されてこのTSHを検査したものの、次回診察以降、違う医師に変更し(私の意思により変更したものです。初診時の医師の対応があまりにも冷たく雑だったので不安になった為)、その変更後の医師から「何故こんな検査をしたのか、わからない。必要ない。」とバッサリ言い切られたからです。その変更後の医師を信頼してここまで付いて来たものですから、今までこの検査をしたことも忘れていて放置していました。ところが最近、自分の過去の検査数値を見なおして整理している中で、このTSHの数値に気が付き、気になり始めました。上記の通り、一度流産しております。このTSHの数値をこのまま放置していていいものでしょうか。もちろん、この2.71という数値でも妊娠・出産されている女性が数多くいらっしゃることは理解しております。ですが、もしかすると私の流産の原因になっているのかもしれないんじゃないかと気になっています。2.50を大きく上回っているわけではないですが、こういった場合、先生ならどのように対応されますか。年齢的にタイムリミットは近く、次に流産をするともうほぼ妊活は終わりなのかなとも考えている中、出来る限りの努力をしたいと思います。先生ならどう指示されるでしょうか。

A 私なら、移植を待っている今の時期にTSHをもう一度調べてみます。その数値により判断するのがよいと思います。

しかし、現在の担当医はTSHに無関心にようですので、このような場合は甲状腺内科を受診して、調べてもらうのがよいでしょう。米国甲状腺学会と米国臨床内分泌学会のガイドラインには「妊娠を目指す女性は、甲状腺機能が正常の場合(fT4正常)でも、THS <2.5に維持するのが望ましい」と明記されています。また、米国生殖医学会のガイドラインには、「妊娠初期の場合にはTSH>2.5で治療を開始する」と明記されています。

下記の記事を参照してください。
2015.9.21「☆潜在性甲状腺機能低下症の取り扱い」