ICMART最新報告2011 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、ICMART(国際ART監視機関)の最新版(2011年)の報告をご紹介します。

 

Fertil Steril 2018; 110: 1067(ICMART)doi: 10.1016/j.fertnstert.2018.06.039

Fertil Steril 2018; 110: 1032(米国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2018.07.011

要約:中国を除く世界65カ国、2560施設から得られた2011年の体外受精•顕微授精のデータをまとめました。体外受精は1,643,912周期が実施され、394,662名の赤ちゃんが誕生しました。中国では200万周期50万人が出産したとものと推測されています。2010年と比べ2011年は、凍結胚移植が13.1%から13.8%に増加、40歳以上の女性が23.2%から24.0%に増加、自己卵を用いた治療では顕微授精が67.4%から66.5%に減少、単一胚移植が30.0%から31.4%に増加、胚移植数は1.95個から1.91個に減少、双胎妊娠は新鮮胚移植で20.4%から19.6%に減少、品胎妊娠は1.1%から0.9%に減少、採卵あたりの出産率は27.1%から28.0%に増加、新鮮胚移植での周産期死亡率は2.10%から1.63%に減少、凍結胚移植での周産期死亡率は1.46%から0.86%に減少しました。一方、凍結胚移植では、単一胚移植が51.6%、胚移植数は1.59個、双胎妊娠は11.1%、品胎妊娠は0.4%でした。移植あたりの出産率は、新鮮胚移植19.8%、凍結胚移植21.4%でした。

 

解説:ICMARTのレポートは、世界のARTの動向を示したものです。凍結胚移植が増加し移植個数が減少して、成功率と安全性が良くなっていることを示しています。なお、日本は例年通り最下位です。このカラクリは3点あります。まず、順位付けは採卵あたりで行なっているため、自然周期系のクリニックが多い日本では移植数が採卵の約半数になってしまいますが、この部分は加味されず採卵あたりの出産率で比較しています(単純計算で2倍にすると他の国と同等になります)。次に、日本ではドナー卵子を取り扱っていませんので、高齢の方が多くなり、出産率が低下します。単一胚移植にいち早く取り組んだ日本では通常1個の胚を移植しますが、米国では2~3個の胚を移植するのが普通です。

 

下記の記事を参照してください。

2015.7.11「☆ICMART最新レポート

2013.5.19「ICMART最新レポート