本論文は、大気汚染と流産リスクに関するケース・クロスオーバー研究です。
Fertil Steril 2019; 111: 341(米国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2018.10.028
Fertil Steril 2019; 111: 256(米国)コメント doi: 10.1016/j.fertnstert.2018.11.027
要約:2007〜2015年に妊娠20週未満で流産に至った方1398名を対象に、ケース・クロスオーバー研究を行いました。7日間に平均10ppbの二酸化窒素を暴露した女性は流産率が1.16倍に有意に増加しました。3日間および7日間に平均10μg/m3のPM2.5を暴露した女性は流産率がそれぞれ1.09倍と1.11倍に増加しましたが、有意差はありませんでした。なお、オゾンなど他の大気汚染物質と流産の関連は認めませんでした。
解説:大気汚染は、心血管疾患、呼吸器疾患、神経精神状態、全体の死亡率に悪影響をもたらすのみならず、妊娠率低下や流産率増加の可能性が近年示唆されています。本論文は、大気汚染と流産リスクに関するケース・クロスオーバー研究を行ったものであり、わずか7日間の二酸化窒素暴露により流産率が増加することを示しています。
通常のケース・コントロール研究では、曝露が永続的につづくことを前提としていますが、コントロール群の設定に苦慮します。ケース・クロスオーバー研究は曝露が短期間にとどまる場合に有効な手法であり、同一者において、転帰事象が発生したとき(症例期)と発生しないとき(対照期)の、それぞれ直近の曝露状況を調べて比較するものです。本論文の著者の地元であるユタ州は気温の関係から冬季にのみ大気汚染が生じる特殊な環境であり、本件に関してケース・クロスオーバー研究が利用できる状況にありました。極めて秀逸と言って良いでしょう。コメントでもその点に触れておりますが、大規模な前方視的コホート研究が必要であるとしています。
下記の記事を参照してください。
2018.6.21「大気汚染と体外受精の成績」
2014.3.5「☆PM2.5よりタバコが怖い」
2013.6.10「☆PM2.5で卵子が少なくなる?」