Q&A3133 ☆妊娠中のビタミンD摂取 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q リプロで治療し妊娠しました。妊娠中のビタミンD摂取について質問です。

 

妊娠治療中にビタミンD欠乏と判明し、1日100μg(25μgx4錠)のビタミンDサプリメントを摂取し妊娠しました。一般の産科へ転院したところエレビットのみにして、ビタミンDサプリの摂取を中断するよう言われ、妊娠13wよりエレビット+ビタミンD25μg1錠へ切り替えました。その後24wで妊娠高血圧症を発症し入院中です。


少しでも症状を良くしたく、ビタミンDの欠乏が気になり、搬送された病院の主治医に相談したところ、やはり4錠摂取は脂溶性ビタミンの過剰摂取になるかもしれないため、やめてくださいとのことでした。私としてはビタミンD欠乏症と高血糖のリスク(妊娠治療中に体質改善後正常値)を持っているため、やはり今からでもしっかりビタミンDを摂取した方が良いのではと混乱しています。ご意見お聞かせください。

 

A かつて、脂溶性ビタミンであるビタミンADEKは過剰摂取が心配なので、摂取は必要最小限にするよう医学部の講義で何度も何度も言われました。しかし最近は、ビタミンDのみ例外であり、むしろ欠乏している方が多いので摂取が推奨されるようになりました。実際に測定してみると足りない方が極めて多く(ほぼ全員と言っても良いほどです)、摂取してもなかなか濃度が上がらない方も少なくありません。医学は知識のアップデートが書かせませんが、昔の知識のまま止まってしまった医師もおられるのも事実です。

 

主治医を納得させるためには、まず25OHビタミンD濃度を測定していただき、不足していることを確認します(1,25(OH)2ビタミンDではありませんのでご注意ください)。そして、ビタミンDサプリを服用してから再び採血し、足りるまで増量することを繰り返すしかないと思います。日本では法律上25μg(1000IU)のサプリしか製造できませんが、海外では5000IU(1日用)35000IU(1週間用)のサプリが販売されています。その意味は、たくさん摂っても大丈夫ということにほかなりません。なお、25OHビタミンD濃度>200 ng/mLが過剰となりますが、リプロでは100 ng/mLを超えた方は1人もおられません。

 

妊娠中のビタミンD欠乏は、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)、妊娠糖尿病、不育症のリスク因子になることが知られており、ビタミンDサプリにより妊娠高血圧症や妊娠糖尿病の予防効果が示されています。しかし、治療効果を示したものはないようですので、これから使ってメリットがあるかどうかは不明です。

 

下記の記事を参照してください。

2019.2.9「ビタミンD補充のガイドライン

2017.8.20「健康な女性におけるビタミンDと妊娠の関係

2017.8.18「ビタミンDの効能:妊娠免疫の観点から

2016.12.4「☆ビタミンD製剤はいつ服用すればよいか

2016.3.31「妊娠中のビタミンD大量投与

2012.12.10「ビタミンDの効用 妊娠•授乳編

 

なお、このQ&Aは、約2ヶ月前の質問にお答えしております。