最近読んでよかった本 185 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

最近読んでよかった本を簡単に紹介します。

なお、紹介の順番は五十音順にしています。

 

私のブログでは月2回本の紹介をしています。

何故本を紹介しているかについては、2016.9.29「「最近読んでよかった本」の新たな効能?「ニュートラルな気持ち」へ!」をご覧ください。

 

 

「あと少し、もう少し」瀬尾まいこ

陸上部の名物顧問が転勤となり、代わりにやってきたのは頼りない美術教師。寄せ集めのメンバー6人がぶつかり合いながら挑む中学最後の駅伝大会。1区〜6区までのエピソードが、それぞれの走者の視点から何度も描かれ、読みやすく深みのあるストーリー。いじめられっ子の「設楽」、不良の「太田」、お調子者の「ジロー」、プライドの高い男「渡部」、部長に憧れる後輩「俊介」、仲間を誰よりも思う部長「桝井」。仲間のため、楽しむため、逃げないため、それぞれの思いを持って努力する。決して一人ではない駅伝の素晴らしさが心地良く、いつの間にか心の底から応援をしたくなるストーリー展開です。

 

 

「おわかれはモーツァルト」中山七里

中山七里「岬洋介シリーズ」8作目の本書。盲目ながらショパン・コンクールで2位に入賞したピアニストの「榊場隆平」は、クラシック界の話題を独占していた。モーツァルト全国ツアーを開催する中で、隆平の盲目が詐称との偽ニュースを流すフリーライター「寺下博之」に取引を持ちかけられる。対応を協議していた矢先、隆平の離れのピアノ室で寺下の死体が見つかる。背中から2発の銃弾での射殺だった。警察は、隆平を犯人の最有力候補として疑う。隆平の窮地を救うべく登場したのは、同じショパン・コンクールで共に戦った「岬洋介」だった。果たして、洋介は隆平を救えるのか?

 

「岬洋介シリーズ」は下記です。

①「さよならドビュッシー」:2017.1.7「最近読んでよかった本 その22」でご紹介

②「さよならドビュッシー前奏曲」:2017.4.8「最近読んでよかった本 その27」でご紹介

③「おやすみラフマニノフ」:2017.6.8「最近読んでよかった本 その29」でご紹介

④「いつまでもショパン」:2017.6.8「最近読んでよかった本 その29」でご紹介

⑤「どこかでベートーヴェン」:2017.6.8「最近読んでよかった本 その29」でご紹介

⑥「もういちどベートーヴェン」:2020.7.6「最近読んでよかった本 その96」でご紹介

⑦「合唱 岬洋介の帰還」:2021.11.6「最近読んでよかった本 その128」でご紹介

 

 

「結婚相手は抽選で」垣谷美雨

少子化に歯止めを!独身の人は抽選で結婚相手を決めるという「抽選見合い結婚法」がまさかの成立。3回相手を断ると罰則として「テロ撲滅隊」で2年間過ごさなければならない。モテないオタク青年、田舎で母親と地味に暮らす看護師、振られたてのお金持ちのお嬢様、法律施行前に滑り込みセーフの結婚を目論む恋人たちなど、個人のプライバシーを完全に無視した法律に右往左往する男女の物語です。罰則回避のために、いかにして相手に断らせるかの駆け引きも繰り広げられます。垣谷美雨さんは、このような突拍子もない法律で、親子問題や心理などを描くのが本当に上手です(「七十歳死亡法案、可決」は、2020.11.6「最近読んでよかった本 その104」で紹介しました)。本作品は、2018年東海テレビでドラマ化されました。

 

 

「背の眼」道尾秀介

福島県白峠村を訪れた作家の「道尾秀介」。村ではここ数年、児童の神隠し事件が起こっているという。河原を散策していると、妙な声が聞こえてきた。そこは、神隠し事件で最初にいなくなった少年の切断された頭部だけが流れ着いた場所だった。この声は少年の霊の声なのか、気味の悪くなった道尾は、予定を切り上げて東京へ帰り、霊現象を探求する友人「真備庄介(まきびしょうすけ)」に相談を持ちかける。同じ頃真備は、白峠村とその隣町・愛染町で相次いだ自殺者の友人や上司たちから似たような相談を受けていた。死ぬ直前に撮っていた写真に写る彼らの背中に奇妙な眼が写り込んでいたのだ。しかも皆、自殺する理由は何もなかったという。その奇妙な眼が自殺を引き起こしたのではないか?随所に散りばめられた伏線が回収され、最後まで上手くまとめた良作です。ホラーミステリーの本書は、道尾秀介のデビュー作で、第5回ホラーサスペンス大賞特別賞受賞作。また、ドラマ化されました。デビュー作がこのような素晴らしい作品なのは、成功する作家のひとつの条件ではないかと思います。

 

 

「六人の嘘つきな大学生」浅倉秋成

成長著しいIT企業「スピラリンクス」が初めて行う新卒採用。5000人の中から最終選考に残った6人の就活生に与えられた課題は、一カ月後までにチームを作り上げてのグループディスカッション。結果次第では全員入社できると告げられていた。全員で内定を得るため、6人は週2回、どんなテーマにも対応できるようディスカッションの準備を進める。しかし、直前になって入社できるのは1人に変更されてしまう。この瞬間、6人はひとつの席を奪い合うライバルになる。本番のグループディスカッションで議論が進む中、6通の封筒が発見される。中には6人それぞれ過去の黒歴史を語る告発文が入っていた。文章も読みやすく、ページをめくる手が止まりません。伏線回収もお見事。一気読み必至です。2024年映画化されます。