FX移民を待ち構える株式市場 | ときは今 天が下しる 五月哉

面白い記事があったので貼っておきます

FXの売買代金って株式市場の10倍ぐらいあるんですね

そりゃFXに流れるわな



株式市場に「移民」が押し寄せる――。こんな観測が市場の一部で浮上している。8月から外国為替証拠金(FX)取引の規制が強化されることを受け、デイトレーダーたちが取引を株式先物などに切り替えるのでは、との見方が出ているのだ。個人投資家の投資行動がどう変化するのか、市場関係者はかたずを飲んで見守っている。
 21日の東証1部の売買代金は1兆885億円。ほんの3、4年前、2兆円台が当たり前で4兆円台に届くことあった日々が大昔のようだ。薄商いが慣れっこになった株式市場とは対照的に、FX市場は活況が続く。
 金融先物取引業協会が集計する57社の取引金額は、5月に過去最高の約327兆円にのぼった。6月は反動で206兆まで落ちたが、水準は前年同月の3割増だ。
 ただ、8月からは状況が変わるかもしれない。証拠金に掛けられる倍率(レバレッジ)に、50倍の上限が設定されるのだ。さらに来年8月には倍率が25倍に引き下げられる。このFXのレバレッジ規制でどんなことが起きるのだろうか。
 主婦トレーダーが円売り・高金利通貨買いの円キャリー取引を膨らませ、「ミセス・ワタナベ」と呼ばれたのは過去の話。世界的な低金利時代のワタナベは、果敢にショート(空売り)を仕掛けるトレーダーに変身した。東京金融取引所の「くりっく365」は、外貨売り持ち高(建玉)が買い持ち高を上回る通貨も珍しくない。
 あるインターネット証券の役員によると、彼らが重要視するのは「手元の資金を最大でいくらまで増やせるかだ」という。リスクの高低や収益リターンの期待値を厳密に計算するより、1等3億円の宝くじのように、最大でいくら稼げるかに強い関心を向けるのだという。実際に、数百倍もの高いレバレッジを提供した新興FX業者は多くの顧客を集めた。
 そこで金融商品ごとに1日あたりの最大利益率を試算してみたところ、表のようになった。
 ポイントは「手元資金にどれだけのレバレッジをかけられるか」「商品の価格が1日平均でどれだけ動くか」の2つ。売買の多いみずほフィナンシャルグループ株の現物と信用取引、日経225先物、FXの円・ドル取引を比較した。
 1日の最大利益率が最も大きかったのはやはりFXで110%。手元に100万円あれば、1日で210万円に増えるチャンスがあるという計算だ。次いで株式の先物取引(50%)、信用取引(9%)、現物株(3%)の順となった。
 では規制後はどうか。FXのレバレッジが50倍になれば、最大利益率は55%に低下する。25倍なら28%になる。この計算でいくと、今年の規制でもFXの優位は揺るがない。ただ、来年8月には先物に「うまみ」の面で抜かれることになる。
 2004年度以降、デイトレーダーの台頭に伴って、個人の売買代金は、株式の現物、信用取引、先物取引、FXと移ってきた。
 これは手元資金を大きく増やせる可能性のある金融商品に、足の速い資金が流れてきた歴史でもある。松井証券によると、月間で100回以上売買をするデイトレーダーは、人数では全体の0.6%だが売買代金では半数を占める。月間10回以上の投資家なら売買代金の9割だ。
 今後、FXの顧客が株式市場に流れるかどうかは断言できないが、ネット証券の一部はすでに先物の手数料引き下げに動き出している。株式市場からFXに移っていた投資家が戻るだけでなく、「投資とは無縁だった人がFXを始めてチャートや経済指標の見方、トレーディング技術を身につけており、今後は株式市場に移る可能性もある」(東証幹部)。
 激震のFX市場の投資家が、株式市場にとって新たなフロンティアとなる可能性もありそうだ。


2010/07/22, 01:00, 日経速報ニュース