「永遠の凪」
ガソリンがゼロになるまで、この鉄の塊が、
走るをやめる地点まで、エンジン啼かなくなるまでは、
あてなくひたすらただ進む、
行きたいところ、生きたい街があるでもない、
終着点を探しているだけ、
ガードレールに擦り取られたサイドミラー、
霧にかすむ2秒先、感情はもう要らない、
アスファルトがひび割れて、やがて失くなるその果ては、
彷徨うだけの日々が終わりを告げるに相応しい、
緑の隙間に赤が流れる、農夫のトラック追い抜いてゆく、
速度計を振り切りたい、計器をすべてゼロにしたい、
風はナイフで真正面から研ぎ澄まされる、
ブレーキはもう擦り切れた、
旅の果てに見るのはきっと、見ないつもりでいた流線、
呟くことさえ失くなった、言葉もやがて意味を探して加速からは離脱する、
その先には未知だけが広がって、
消えてゆく、途絶えてしまう、いつもどこかにそんな景色を探してた、
繰り返してゆく、摩耗してゆく、やがてかたちを為さなくなって、
虚無になるのを待っている、其れだけしかリアリティを持たないリアル、
旅路の先に想いを馳せる、そこにはもう誰もいない、
錆びて放置の観覧車、足下には干からびた花束と、
置き去られたエスパドリーユ、
知らない国ばかりを描いた、架空の世界の地図はなぜか、
羊の革に刻まれている、
ガス燈照らす映画スターの似顔絵と、枯れてしまった古い噴水、
野犬たちは劇場跡の錆びた屋根の下で寝る、
そんな風景、見たことのない風景、それでもなぜか懐かしい、
探していたはず最終地点にゆくまでずっと、最高速度を緩めない、
留まれないから行く他なかった、もう誰もいない場所、たどり着くのはそこがいい、
キリング・ミー・ソフトリー、ラジオがそう歌ってた、
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