災害対策と緊急事態条項を考える | ふるさとを守りたい、子供達の未来を守りたい

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日々頭に浮かんだことを語りたいと思います。

堤未果氏の著書「政府はもう嘘をつけない」を読みました。このなかで特に勉強になったのが緊急事態条項に関する部分です。


私は、日本は自然災害大国であり、大規模災害時に迅速な対応をとれるように法律の整備や、必要であれば憲法にも何らかの規定を設けることも検討すべきだと考えていますが、この本の中では、アメリカの9.11同時多発テロの際に当時のブッシュ大統領が宣言した「国家安全保障上の緊急事態」やフランスで2015年にパリ同時多発テロ事件が発生した際に、オランド大統領が発令した「非常事態宣言」を例にあげ、非常事態に乗じて時の政権が国民に重大な不利益を与えるような法律を制定したり、「安全保障上の緊急事態」などの曖昧な定義を政府が恣意的に解釈して権力を集中・強化し、さらにそれが無制限に延長されるなどの乱用、悪用の危険性が指摘されていました。


確かに、日本でも東日本大震災の混乱の中で電力自由化、再生可能エネルギー固定価格買取り制度(FIT)、TPPなどが進められた例があり、政府による乱用には警戒する必要があると感じました。ただ、「政府による乱用の危険があるから緊急事態に対処するための法律や憲法の規定は一切設けない」、「いや、乱用の危険があっても(または、危険性は全く無い)、緊急事態に対処する法律や憲法の規定は設けるべきだ」などという0か100かの発想ではこの問題の適切な解決策を導き出すことは不可能だと思います。


そこで、政府による乱用・悪用を防止しつつ、大規模災害などの非常事態への迅速かつ適切な対応を行う方法を考えてみたいと思います。


自民党は憲法改正草案に緊急事態条項を盛り込んでいますが、憲法改正には長い時間を要するので、大規模災害に対処する体制を早期に整えるには憲法よりも法律制定で対応するほうが有効ではないかと私は思います。


また、この憲法改正草案は緊急事態条項の有効期間が最低100日となっており、フランスの非常事態宣言の基本的に12日間有効で、それ以上延長の場合は国会決議が必要などの諸外国の緊急事態条項と比較して有効期間が長い、99条第1項の「緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する制令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる」という条文がナチスドイツの「全権委任法」第1条「ドイツ国の法律は、憲法に規定されている手続き以外にドイツ政府によっても制定されうる」とほとんど同じ内容になっている、今のドイツ憲法の「憲法裁判所」のような政府による緊急事態条項の乱用に歯止めをかけるシステムが不十分など多くの問題点が指摘されており、仮に日本国憲法に緊急事態条項を設ける必要があるとしても、被災者数、被災家屋数、地震の震度やマグニチュード、大雨の雨量、台風の勢力、被災地域の面積など具体的な緊急事態条項発令の基準を定める、発令の決定に第三者の危機管理の専門家を強く関与させる、憲法裁判所を設置したり国会の権限を強化するなど、政府による乱用・悪用に歯止めをかける仕組みをじっくりと時間をかけて議論していくべきです。


それから、大規模災害に迅速かつ適切に対処するためには、憲法の緊急事態条項や法律の内容以上にそれを運用する人間の能力が重要になると思います。大規模災害時に危機管理能力の低い政府や地方自治体が緊急事態条項や法律を運用した場合、事態を逆に悪化させてしまう恐れがあるからです。大規模災害時に首相や各大臣、自治体の首長を補佐する十分な人数の有能な危機管理の専門家を政府と各自治体に配置することが緊急事態条項や法律の整備以上に重要なのです。


私は、今安倍政権が検討している憲法改正による緊急事態条項創設よりも、災害時の被害を減らすことと、被害が出た場合に迅速な復旧復興を可能にすることを目的として政府が行うべき事前対策を具体的に定め、定められた対策を行うためだけに限定して政府や自治体の権限を強化する法律を制定したり、必要であれば憲法改正を行うほうが有効な災害対策になると思います。


8月に台風10号が東北、北海道に上陸し、岩手県岩泉町や北海道南富良野町などに甚大な被害をもたらしましたが、このニュースで国土交通省の担当者がインタビューに応じ、「被災した道路を被災前と同じように復旧した場合、また同じような災害が発生した場合に同じような被害を受ける恐れがあるため、復旧方法を検討する必要があり時間がかかる」というようなことを言っていました。


こうしたケースで迅速に復旧復興を行えるように、まず応急復旧を行い、その後に道路の付け替えやトンネル化などの本格復旧を行う、あるいは、応急復旧と本格復旧を同時並行で行うなどインフラ復旧の具体的手順を事前に定めたり、都道府県道や市町村道も含めて、主要な道路の災害復旧の工法、施工業者などを事前に決めることを義務付ける、災害の規模に関係なく被災した地方自治体管理のインフラや公共施設の復旧費用やガレキ処理費用を全額国費負担にするなどして地方自治体の災害復旧の財政負担をゼロにする、鉄道や電力・ガス・通信の災害復旧費用は災害の規模に関係なく全額国費負担とする、事前に地震や水害をはじめとしたあらゆる大規模災害の復旧復興費用を試算しておき、実際に災害が発生した場合には決められた上限の範囲内で予算を編成して国会審議無しで執行できるようにするなどの法律を制定すべきだと思います。


さらに、被害を最小限に減らすための事前対策として、現行の耐震基準に適合していない住宅等の既存建築物を定められた期限内に耐震改修や建て替えまたは解体することを義務付け、期限内に建物の所有者が対策を行わなかった場合は罰金や建物の売却、賃貸、使用の禁止などの罰則を設ける、国が防災・減災の目標を定め、その目標が達成されるまでの間、政府が防災・減災を目的とした財政支出を対GDP比の一定割合で毎年行えるようにする、緊急輸送道路や避難路、堤防などの整備など防災・減災対策のための土地収用を円滑に行えるようにするなどの法整備を行うべきだと思います。


熊本地震 「大規模災害復旧・復興予算早期執行法案」http://s.ameblo.jp/nyako-0924/entry-12160027633.html


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