昭和11年2月 綿子ふる著のみ著のまゝ鹿島立かしまだち
二月十六日 楠窓なんそう東道の下に、章子を伴ひ渡仏の途に上る。午後三時横浜解纜かいらん箱根丸にて。

我心春潮にありいざ行かむ
二月十九日 神戸碇泊ていはく。花隈、吟松亭、関西同人句会に列席。

日本を去るにのぞみて梅十句
二月二十一日 朝、門司著。萍子へいし招宴、三宜楼。

上海の霙るゝ波止場後あとにせり
二月二十六日 箱根丸船中。

春潮や窓一杯のローリング
二月二十九日 朝、香港ホンコン出帆。

顔しかめ居る印度人町暑し
(青空文庫より)