寒卵/かんたまご
三冬
寒玉子
寒中の鶏卵。寒の
卵は滋養があると
言われる。割ると
黄身が盛り上がり
いかにもうまそう。
これを食べればじ
きに春がやってく
るような気になる。
食べ物は何でも命
をいただくものだ
が、寒卵はことに
その感が強い。
苞にする十の命や寒鶏卵(かんたまご)
太祗 「太祗句集後篇」
寒卵かゝらじとする輪島箸
前田普羅 「普羅句集」
(きごさい)より。
クロッキー 寒卵
悠
ひとのみに母の命を寒卵
意志もちぬ女の胎の寒卵
大粒の月の欠片や寒卵
純金の表面張力寒卵
寒卵割るや命の真つ黄色
どろどろと夕日崩れて寒卵
寒卵熱砂地獄の飯の上
一寸の光陰惜しめ寒卵
芭蕉の言葉
俳諧に二躰あり。心のはいかい、詞のはいかいなり。
心の俳諧を一段ほめられたり。
意
美しい詞、カッコいい詞、巧みな表現もよいが、下手でも思いを込めた俳句をめざすことです。
寒卵で一句どうぞ。