完走おめでとう!

美作直哉 さん

91 暖冬と冷夏のオフィス ルーチンの書類の中に秋が来たらしい

オフィスの情景が立ち上がってきますね。書類の中にだけ秋がくる。なんだか、空きが出来るみたいな感じにも取れて面白いです。ただ、最後「らしい」で終わっちゃうのは勿体無い気がしました。

10 太郎次郎三郎四郎の夢運ぶ線路の繋ぎ目落ちたのは誰

最初が「一郎」じゃないのがミソですね。面白いです。

返歌「ルーチンの書類にまぎれた秋の日が線路に残すタロジロの夢

敏恵 さん

68 四つ目の角を曲がって突き当たりおもちゃの病院やっとこみつけ

やっとこが「おもちゃの兵隊」を連想させて面白いです。

4 ゆず二つ湯の面をゆき流れ出る縁にたゆたうその香も淡く

ゆず湯の情景ですね。ゆずの実と水に浮く蝋燭がイメージできて綺麗ですね。

返歌「おくになまりの兵隊さんがあふれだす湯気にとろけてやっとこと歌う

林 ゆみ さん

77 天皇の崩御に命奪われし祖母が残した飴色の櫛

明治・大正・昭和と生きてきた人の壮絶さを感じます。神として崇められていた天皇。戦争が終わった瞬間に自決した人たちも多かったと聞きます。櫛が人生そのものみたいですね。

71 美しき銀の髪もつ二次元の男に搦めとられる真昼

銀色の髪の男性は、とても神秘的に感じてしまいます。この歌が一番好きですね。なんだか、幻想的でそれでいてとてつもない寂しさを感じます。

33 ひたひたと山椒魚が這いまわる感覚だけの望まぬ愛撫

この感覚、わかるなぁ~って思いました。ゆみさんの違う一面を見たような気がします。

2 君の手を温めるため飴色になるまで煮込むオニオンスープ

この歌は、ハッピーなのかそれとも譲れない何かに対する挑戦とも取れる気がしてしまいました。100首目から逆に読んで行って、この歌に出逢った時、なんだかそれまでの流れと異質なものを感じてしまったのです。

1 電話から漏れる貴方の妻の声息をひそめる星も私も

この歌は、なんだか怖いなぁ~と思いました。上の歌を読んだ後にこの歌が来ると色々な想いがよぎってしまいます。のっけからこんな歌を詠んだのかぁ。。。ノンフィクションにせよフィクションにせよ、女性としての根底にある不穏な部分を感じずにいられませんね。

返歌「うつくしいたそがれが二次元の男つれさってスゥプにおちるコール音

以上です。