himituhanazono 島村洋子作品の中で気に入っている長編作品で、人の心が崩壊していく様や軸がずれている人と接する時の痛みの描写などがリアルでちょっと怖さを味わう物語だ。

主人公の久本まりこが大学を卒業し、入社したのは損保の支社だった。
十人程度の小さな店舗で女性二人、あとは男性社員という環境の中での社会人生活がスタートした。
唯一の女性社員である同僚は3歳年上で地味目な人だった。
使用している文房具が全てキャラクターモノという以外は目立ったところのない女性だった。
親切で、優しい人に見えた彼女が、あることをきっかけに変貌する。
まりこにしかわからない変化で、まりこは困惑していく。
一体何がいけなかったのだろう?
当然のことをし、求められることをしたまで。
全ては仕事の1つと考えて行ったこと。
それが彼女を刺激し、まりこは徐々に追い詰められていく。
誰もが持っている花園に、土足で踏み込んではいけないのだ。
まりこが気付いたときにはもう遅く、彼女の花園はまりこによって踏みにじられたということになっていた。
はじめは順調に思えた毎日が、少しずつ壊れていく様がリアルに描かれている。

他にも無言電話を寄越す編集者、たった一度会っただけの男が送ってくる手紙、同窓会で紹介された男性アイドルの恋人を名乗る既婚の女。
まりこの数年間を綴っているのだが、その間に小さな崩壊がいくつも描かれている。
そして、それらの事柄は女性なら一度は経験したことあるような事柄でリアルに迫ってくる。
意外なラストには呆然とするが、面白く一気に読めた。
女性向けの1冊。

<角川書店 1994年>

著者: 島村 洋子
タイトル: ひみつの花園