yoruniji 姉妹、ホステスと客など人と人との繋がりを主題とした作品集。

『夜かかる虹』はアルバイトで生計を立てるフキコが主人公。
恋人・修平とのんびりとテレビを見ていたら、画面に自分そっくりの女が映し出される。
間違いなく、妹のリカコだった。
甘ったるい声、視線を意識した笑顔・・・
昔から疎ましく思っていた妹そのものだった。
そのリカコから「引っ越した」と連絡があってから、フキコの穏やかな生活に波風が立ち始める。
突然男を連れてやってきてその男を放置して消えたり、フキコと修平のなれそめを聞き出したら同じように修平に連絡を入れ近付いたり、フキコの心は乱され、幼い頃に抱いていたリカコへの黒い気持ちが広がっていく。
我慢できず発狂するフキコ、それに反論するリカコ。
リカコの口から発せられる言葉がフキコに染み込んでいく。

どんなに冷たくされても、妹は姉を想い観察し姉の本質を知っている。
姉は知れるはずの妹の本質に蓋をして、苦手だ嫌いだと目を反らしてばかりいる。
だけど姉妹なのだから、関わらずに生きることは難しいのだ。
突然やってきたトラブルを通して、自分は恋人をどう思っているのか、妹が自分をどう思っているのかがわかりひとまわり大きくなる姉の姿がリアルだった。
複雑な人間関係から逃れて暮らすことなどできないのだと改めて思う。
角田光代の作品の中では異色の2作品が収録され、新しいジャンルとして楽しめる作品。

<講談社 2004年>


著者: 角田 光代
タイトル: 夜かかる虹