grennmoon 角田光代の中編小説集。


『みどりの月は』恋人とその身内と他人と同居してしまう女の日々を描く。

主人公・南は幼い頃から少し変わっているところがあり、親からも心配されていた。
あまりに不思議な行動が多いと周囲は嘆き、精神科に連れて行かれたりもした。
本人は至って普通だった。
ただ、時々意識が遠くへ行ってしまうだけだった。
それに騒がれるのがたまらなく、なんとかその意識が遠のくスイッチを切ってしまおうと努力する。
そうやって大人になり、大学時代の恋人と結婚できるものと思っていたら突然別れを切り出され、恋人は同じ会社の女性と結婚してしまう。
彼の新居を訪れ、南は早く好きな人と暮らし結婚しようと心に決める。
そして出会ったキタザワ。
なんとか一緒に暮らそうと仕向け、キタザワと住めることになるが、キタザワの住まいには既に同居人がいた。
「遠い身内」だというマリコと、その恋人サトシ。
薄汚い二人と、乱雑でゴミが散らかり人が住んでいるとは思えない状態のマンション。
外観は至極普通なマンションなのに、キタザワの部屋の中は酷い物だった。
南は早く二人を追い出そうと画策するが、キタザワはマリコ達を追い出そうとしない。
その理由を知り、南は呆然とする。
モラルやルールが存在しない部屋の中で、南は少しずつ毒されていく。


無気力な人間と一緒に過ごす過酷さ。
目標もなくただ生きるということが出来る凄さ。
南以外の登場人物の適当さが腹立たしくもあるし、苛立ちも伴うので読み進めるのが少し苦痛だった。
有り得ない物語だろうけれど、もしも隣の部屋がこんな状態で無気力な何も考えない人間が住まっているとしたら恐ろしい。


<集英社 1998年>


著者: 角田 光代
タイトル: みどりの月 (単行本)

著者: 角田 光代
タイトル: みどりの月 (文庫本)