ariko 米国系銀行や証券会社で債券ディーラーや大手金融法人を担当する外国債券セールス等を経験している著者が個人資産運用の世界をわかりやすくコミカルに描く経済小説。


主人公・財前有利子(ざいぜんありこ)は28歳の個人投資家向けのアドバイザー。
中堅の証券会社ふたば証券銀座支店で辣腕をふるっている。
本社でトレーダーをする坂上という彼氏がいる。
恋も仕事もバリバリこなし、投資アドバイザーの仕事に誇りを持って挑んでいる。
個人投資家を相手にしていると、突飛な以来も多数飛び込む。
突然大金を抱えてやってきて、1週間で倍にしてくれと依頼する老人。
退職金を運用し、働かずに生活したいと相談してくる中年男。
有利子はその都度臨機応変に対応し、なんとか解決していく。
そんな中、外資系の証券会社からのヘッドハンティングに合う。
自分の可能性が試せるかもしれないとレジメを用意し、面接に挑むがとんでもない事件に巻き込まれおじゃんとなる。
それ以外にも恋人・坂上の転職問題や大損、結婚問題や隠し続けていた家族との確執などが露になっていく有利子。
波乱万丈な毎日の中で、有利子は市場を相手に顧客との信頼を築きビジネスウーマンとして開花していく。


経済がテーマの小説ながら、有利子の恋愛などもうまく絡め読みやすくなっており、働く女性向けでもなく、資産運用に興味のある女性、金融業界で働く女性に興味のある人など幅広い層が楽しめるお手軽小説となっている。
途中、出てくる企業名はこの会社かな?などと想像できる楽しみもあり、経済素人の私でもわかるような内容である。
あとがきで著者が述べていた「おもしろくて、誰でも気軽に手を伸ばせるようなもの」という条件は十分満たしているのではないだろうか。
私は株もやらないし、資産運用するほどのお金も無いし、そんなに興味を持っているタイプではないが、これを読み経済について知っていくことはマイナスじゃないなと思えた。

新しい視野が開けるかもしれないきっかけをくれた。
著者の他の作品も是非読んでみようと思った。



<角川書店 2002年>


著者: 幸田 真音
タイトル: 投資アドバイザー有利子 ARIKO (単行本)


著者: 幸田 真音
タイトル: 投資アドバイザー 有利子 (文庫)