littlebylittle 高校生作家の作品が芥川賞候補作となり話題になった作品。
複雑な家族、穏やで淡々とした日常を描く。 主人公・ふみは高校を卒業しバイトをして暮らしていた。
進学するつもりが、親が離婚し学費を捻出出来なくなったので学費を貯めてから、ということになったのだ。
母親と異父姉妹のユウちゃんと3人で暮らしている。
家族は仲良くやっているし、バイトも嫌ではないし、ふみは特に不満なく毎日を過ごしていた。
或る日、母の勤める整骨院に「ふみちゃんが好きそうな男の子がやってきたわよ」と母が言う。
その言葉が気になってではないが、ふみは整骨院に行って治療を受ける。
そこで出会ったのが、キックボクシングをしている周だった。
いまどきの若者とは違い、真面目で一生懸命で穏やかな青年・周に惹かれるふみ。
二人は少しずつ距離を縮めていく。
恋、バイト、家族、その周りの人々。
ふみの日常が淡々と綴られる。

起承転結を求める作品ではない。
穏やかにはじまり、穏やかに終わっていく物語で、本当に普通の毎日がある秩序を持って描かれているような気がする。
それが著者のペースなのかもしれない。
著者の作品は初めてだったが、久々に読んだ後に○や×をつけにくい作品だったので余計に他の作品が気になってしまった。
つまらないとも言えない、面白いとも言えない、でも嫌いとも言えない、インパクトも無い。
なんとも透明で空気や水のような存在の作品で感想を述べ難い。
あとがきにある「ささやかな日常の中にたくさんの光を見つけ出すような小説をこれからも書きたい」というのがなんとなくわかる。
そうなのかもしれない。
この小説は、ささやかな日常に1日1度は差す光を掬い取って描いているのかもしれない。
でも途中途中に出てくる父親からの虐待的描写や、ペットの死についてのくだりは穏やかでは括れない。
実は奥が深かったんだ、と今思う。


講談社 2003年


著者: 島本 理生
タイトル: リトル・バイ・リトル