renaishosetsu 5人の人気女性作家の恋愛とお酒をミックスした短編小説集。
サントリーと新潮社のコラボから生まれた恋愛アンソロジー。


『夜のジンファンデル』は篠田節子の作品。
主人公の絵美は、保険会社に勤める夫と暮らしている普通の主婦だ。
学生時代からの友人百合子とその夫・隆夫妻とは家族ぐるみの付き合いを続けている。
隆は五十を目前に、中東へ海外赴任することが決まっていた。
それは出世コースを外れたことを意味するもので、決して喜ばしい転勤ではなかった。
ホームパーティーの席で見る隆は特に打撃を受けているとは思えなかったが、気になっていた。
隆の住まいの庭には、葡萄棚がありジンファンデルがなったと隆は言う。
その葡萄は、数年前にアメリカでの出来事を思い出させた。
夫と行くはずだったサンフランシスコに一人で向かった絵美は、現地でトラブルに見舞われ、当時サンフランシスコに駐在していた隆に助けてもらう。
その時の思い出が、ジンファンデルだった。
サラリーマンとしての自分を優先した隆の話に、絵美は笑わずにはいられなかった。
そして、隆からの告白は絵美の心に深く刺さる。
その後、何もなかったように中東へ行った隆にはもう二度と会うことはなかった。


よしもとばななの『アーティチョーク』は祖父が愛したウイスキーの飲み方にこだわりを持つ女の恋愛と祖父への想いを描いている。
これもまた、よしもとばななの世界観がきれいにまとまった短編だ。
サスペンスが多い乃南アサの恋愛小説も久々に読むことができ、私個人としては本書はかなりの満足度である。
ベテラン作家5人なので安心して読めるし、失敗がなかった。
ひとりでお酒を飲みながらのんびりと読書をしたいときにおすすめの1冊。


<新潮社 2005年>


川上 弘美, 篠田 節子, よしもとばなな 他
恋愛小説