3domeshojiki 第8回坊っちゃん文学賞大賞受賞作『三度目の正直』を単行本化の為に加筆し出版した中編2話が収録された本。
三度目の正直』の主人公は幼なじみの男女の高校生。
男のような女の子・なな子とバンドに精を出す功平。
二人は幼稚園からずっと一緒の二人はある秘密を共有していた。
それはなな子が「女の子が好き」だと言うことだった。
功平はそれを知った幼い頃から、なな子のその秘密を守り二人で居る時も触れないようにしていた。
ガールフレンドやバンド仲間と過ごしていても、なな子から相談依頼のメールがくれば駆けつけてしまうのは「女の子が好き」という発言の衝撃が未だに心にあるからだった。
修学旅行等の行事を休むなな子。
女の子が居るとどぎまぎしてしまい不安定になるのでクラスメートともうまく会話が出来ない。
変わり者として過ごしてきたなな子の前に、普通に接してくる女生徒が登場しなな子が少しずつ変わってくる。
功平も気が気じゃない。
高校生の悩む姿、せつない思い、幼なじみとしてお互いを思いやる姿を綴る。

高校生が主人公の作品は最近避けていたのだが、友人に借りたので読んでみた。
同性愛やちょっと変わった高校生が主人公といった作品が昨今多いが、刺激が強いものが目立った気がする。
しかし本作は同性愛という難しい題材を扱いながらも、サラリとしていて変な読後感もなくよかった。
ただ、面白いか否かと言われると非常に微妙で「・・・・。」という感じなのだ。
男女の友情を描きながらも、心の中の状態で表現するならば男と男の友情に近いという複雑な設定だし、そういう作品を好むタイプでもないので可も無く不可も無くという印象でしかない。
同性愛にしてはサラリとしている物語だし、淡々としている部分が読みやすいのかもしれないが物足りなさが目立つ。
若い作家なので今後を期待したい。

<マガジンハウス 2004年>


浅井 柑
三度目の正直