koinokaori 恋と香りがリンクすることは結構ある。
春先に沈丁花の花の香りを嗅ぐと中学校の頃に好きだった男の子を思い出す、など。
そんな恋の香りにまつわるエピソードを絡めたアンソロジー。


『日をつなぐ』は宮下奈都の作品。
主人公は赤ちゃんをひとり持つ女。
初恋の“修ちゃん”と結婚し、彼の住む街・秋田で暮らしている。
毎晩、豆のスープを作っている。
忙しい“修ちゃん”の為に、すれ違う生活の寂しさを埋める為に、彼女はスープを作っている。
“修ちゃん”は彼女の初恋の人だった。
地元・福井の中学校の同級生だった“修ちゃん”とはひょんなことで知り合い、そのまま彼を想い続けた。
同じ高校に進むものの、勉強のできる“修ちゃん”は京都の大学へ進学し、彼女は信金に就職する。
離ればなりになったものの、遠距離恋愛の中で二人の気持ちを積み重
就職で秋田勤務になった“修ちゃん”とますます距離が出来てしまい困惑している時に結婚した。
そして、子供が産まれた。
忙しい夫、知り合いの居ない寒い街、慣れない子育て。
彼女の中で何かが壊れはじめる。
そんな時思い出したのが豆のスープの香りだった。
彼女は豆のスープを作ることで自分を保っていくが、二人の心は保てなくなっていた。


せつない話が多い。
短編なので細かい描写は無いが、心の中でせつなさが渦巻く物語が多い。
冬っぽいイメージの物語が多い気がしたので、もう少し寒くなってから読めばよかったかな、と残念でならなかった。


<角川書店 2004年>


角田 光代, 島本 理生, 栗田 有起, 生田 紗代, 宮下 奈都, 井上 荒野
コイノカオリ