経済とは何か? | Mr.Gの気まぐれ投資コラム

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香港を拠点に活動する個人投資家であり、自称「投資戦略予報士」Mr.Gがお伝えする海外投資の生情報。
ねだるな勝ち取れ、さすれば与えられん!

そもそも経済とは何か?

 

アメリカの経済が崩壊するとか、中国の経済が破綻しているとかいうようなニュースが多いが、その多くは何らかの政治的意図を持った情報操作が背景にあると思ったほうがよい。

 

日本の経済についても、オワコンだと言われたり、いやいや世界の中ではまだまだ競争力があり豊かであると言われたり、真逆の情報が錯綜していて何が本当なのかは報道からは分かりにくい。

 

その原因は、我々がそもそも経済というものを学術的にという意味ではなく、その根本的な構造についてちゃんと理解していないからではないか?と思える。

 

学術的に経済の仕組みを知り尽くした経済学者が投資によって大金持ちになっていないことを考えると、経済学というものに金儲けの仕組みやその秘密が隠されているわけではなさそうだし、日銀の総裁に経済学者がなったからといって景気や物価を正しくコントロール出来ているわけでもない。

 

それではなぜ、毎日のように為替や金利や株価など経済動向についての報道が行われ、その事に我々市民が注目する必要があるのかと思ってしまうが、経済の本質を知らずに世の中の流れを報道から掴むことは難しく、その謎で理解できない数字に翻弄されがちとなる。

 

特に、政府の金融政策や日銀の動向といったものが、金利や物価、株価や為替にどのような影響を与えるのか?その結果我々の生活はどのように変わるのか?というのはイメージしにくい。

 

それは、おそらく我々が自分の肉体に関して起っていることや健康状態について、その根本を理解しておらず、ネット上に書かれる情報に翻弄されたり、医者の言うことを盲信したりすることで、過度に薬やサプリメントのようなものに依存して、より不健康な状態に陥るのと似ていなくもない。

 

気付かないうちに、資本主義経済の下降期の特徴として挙げられる「ポピュリズム=大衆迎合主義」の台頭が起こっていて、メディアは国民のマインドをコントロールする道具として見事に政府に操られていると考えた方が良いだろう。

 

減税や、給付金のバラマキ、金融政策によるインフレ抑制、円高誘導、賃上げなどいずれもなんとなく大衆にとっていかにも聞こえの良いニュースには特に注意した方がよい。

 

そもそもそれらは、個々に矛盾していたり、瀕死の経済そのものを延命できても長期的に改善と回復を目指すものではない。

 

ナマの経済(実体経済)というものは政府によって公表される(信憑性にも欠ける)数字だけでは語れないものであり、現場で肌で感じなければ評価不能な側面もある。

 

「経済」という言葉は、人々が生活するために必要となるモノやサービスを生産し、分配、商品する活動や流れを一般的に意味し、同時にやりとりされる通貨の価値でその規模が量られているが、ストックだけではなくフローの概念で語られるべきものであり、生産量や消費量やGDPの成長率といった数字の結果だけをみてその健全性を評価することはできない。

 

特定の国の、その国の通貨で回っている経済というものは、まるで生き物のようなものであり、生き物としてその健康状態を把握する必要がある。

 

経済というものの基本構造を理解するためには、以下のような書籍も読みやすくて良いような気がする(私は読んでいないが・・・)。

 

 

米ヘッジファンド「ブリッジウォーター」の設立者であり、ヘッジファンド界の帝王とも呼ばれるレイ・ダリオ氏は、経済というもの以下のように捉えている。

 

1.経済はシンプルな活動の集積である。

2.人、会社、政府機関の信用による借金が経済を拡大させる。

3.ただし、信用による支出が拡大し過ぎるとバブルが発生し、金融危機を招く。

 

このレイ・ダリオ氏の著書である「変わりゆく世界秩序(Changing World Order)」の解説アニメーション日本語訳版がYOUTUBEで公開されており、これも経済の本質とその変遷を理解する上では良い教材だ。

レイ・ダリオ著 「変わりゆく世界秩序」 - YouTube

 

また、レイ・ダリオはかつて経済に対して金融・財政政策よりも、「ポピュリズム」の動きが強い影響力を持つとの見方を示しているところも興味深い。

 

金融・財政政策より経済に対して影響力を持つ「ポピュリズム」とはいったいなんなのだろう?

 

「大衆迎合主義」とも訳されるポピュリズムは、民主主義とは両立しえず、民主主義が標榜する理念を根幹から脅かす存在として捉えられがちであり、一般的に大衆からの人気を得ることを第一とする政治思想や活動を指す。

 

たとえば、アドルフ・ヒトラーが代表的なポピュリストとして挙げられるが、身近なところではドナルド・トランプ氏や日本の小泉純一郎氏、橋下徹氏などがポピュリストと位置づけられることが多い。

 

本来は大衆の利益の側に立つべき思想だが、大衆を扇動するような急進的・非現実的な政策を訴えることが多く、特定の人種など少数者への差別をあおる排外主義と結びつきやすく、対立する勢力に攻撃的になることもある。

 

既存の政治に対する不満や現状への閉塞感が高まると、ポピュリズムが台頭しやすくなり、レイ・ダリオ氏的には、このポピュリズムの台頭が経済サイクルが低迷期に入ったサインであるということらしい。

 

確かにいま日本を含む資本主義国家で起こっている事はポピュリズムの台頭であると思える。

 

政府が、本来は「バカ」と位置づけている国民の大半が、喜びそうなバラマキや減税のような政策を打ち出し、いかにも大衆の立場に立っているかのような印象を国民に植え付けながら、政権を確立し、実際には真逆の成果を生み出している。
 

一国の経済は、家計・企業・政府というの3つの経済主体が、お互いに経済循環する関係性で成り立っており、政府は金融政策により、通貨の流通量をコントロールし、インフレを誘導したり抑制したり、経済成長を促したりしているが、その変動要素となる調整弁の役割を、税、金利、為替などが担っていると考えられる。

 

そして、メディアもそれらの要素プラス日経平均株価のような株価指数の変動を、まるで天気予報のようなノリで毎日報道している。

 

その中で、最近よくニュースに出てくる日本の中央銀行たる日本銀行の役割は、日銀のHPで分かりやすく説明されている。

金融政策の概要 : 日本銀行 Bank of Japan (boj.or.jp)

 

***以下日銀のHPより抜粋***

「日本銀行はわが国の中央銀行として、物価の安定のために、金融政策の決定と実行に当たっています。

ここでいう物価とは、モノやサービスの価格を全体としてとらえたものです。

物価が安定していて、お金を安心して使うことができるということは、あらゆる経済活動や国民経済の基盤です。

金融政策とは、公開市場操作(オペレーション)などの手段を用いて、金融市場における金利の形成に影響を及ぼし、通貨および金融の調節を行うことです。

金融政策運営の基本方針は、日本銀行政策委員会の「金融政策決定会合」とよばれる会合で決定します。会合では、金融経済情勢に関する検討を行うとともに、金融市場調節方針や当面の金融政策の運営方針を決定し、決定した内容は直ちに公表しています。ここで決定された金融市場調節方針に従って、日本銀行では日々の金融調節の金額や方法を決定し、資金の供給や吸収を行っています。」

***

 

日銀は政府の金融政策の実行部隊として、「物価の安定」を最大の目標として存在しているようだ。

 

一方、為替介入など為替政策は財務省管轄であるが、日銀による金利操作が為替にも影響を及ぼすことを考えると、為替に影響をもたらす金利操作については財務省の承認が必要だと考えられる。

 

ここで財務省としては、円安が良いのか円高が良いのか?という疑問が沸くが、それは時と場合によって目的が異なるのと、過度な為替変動は好ましくないが、それはどの程度の変動幅が許容範囲なのか?が謎ではある。

 

為替介入に関しても、わが国では、為替介入は財務大臣の権限において実施することとされており、日銀は、特別会計に関する法律および日本銀行法に基づき、財務大臣の代理人として、その指示に基づいて為替介入の実務を遂行しているとされている。

 

お金が溢れているのに消費が伸びない日本経済がフローの観点から健全でないことは明らかであり、今や日に日に経済成長を伴わない悪いインフレが進行している。

 

その原因として我々がよく耳にするのは、「日米の金利差拡大による円安」であり、米国の金利が上げ止まり、20年以上行われてきた日銀のゼロ金利政策(金融緩和政策)が解除されて、日米の金利差が少しでも縮小すれば円高に戻るだろうという学術的にも現実的にも論拠の薄い筋書きを我々は刷り込まれており、あたかも円安とそれを起こしている日銀が悪いかのような印象が強い。

 

現実に、米国が利上げの終了を示唆することで一気に5円以上も円高に振れるくらいだ。

 

円安がインフレの元凶だと思い込んでいる我々にとって、円高は歓迎すべき良い動きだと思いがちだが、日本経済全体の健全性で言えばそうとも限らない。

 

円高が急に進めば、世界中で円を保有していて売りたいと思っている売り待ちの外国人が一斉に円を売り浴びせる可能性もあるし、その結果以前よりも円安に振れてしまうかもしれない。

 

また、円高になれば、物価上昇も抑制されるが株価も下落する。

 

財務省的には、そもそもインフレが進んだ方が、インフレの税的要素を考えれば財政は健全化されるので、財務省はインフレを望んでいるのかもしれない。

 

しかし、日銀としては物価の安定が使命である故、過度なインフレを容認することはできない。

 

しかし、日銀がインフレを抑制するために金利を上げる方向に舵を取れば、日米の金利差が縮まり円高に振れる可能性があるが、日銀は日銀の信用保持のために基本的に金利を抑制し限りなくゼロのまま緩和政策を継続したい。

 

もし、財務省が円高を望んでいないとすれば、為替介入はしないし、為替に影響を与える日銀の利上げ(マイナス金利撤廃)も推進しないだろうから方向性としては日銀と一致している。

 

しかし、急激な円高の進行がその後に更に歯止めのきかないような円安とインフレの進行に拍車をかけるとすれば?なかなか財務省も迂闊に為替介入による円高誘導も危険だと感じているだろう。

 

いずれにしても、日銀と財務省は必ずしも同一のゴールを目指しているとは言えない。

 

根本的な問題は、ただでさえ不健康な日本の経済が世界でも急速に進むインフレに直面し、瀕死の危機にあるにも関わらず、それに対して延命策以外に打つ手が無いということだろう。

 

生き物である経済にとってもっとも致命的なのは、血の巡りが悪いのに無理矢理血流を増やされ、血圧が上がり続けて、脳梗塞や脳溢血の危険を孕むインフレの進行であり、そのような悪いインフレの進行中に血液である紙幣を増刷し続けて、血管が破裂してしまうと一巻の終わりだ。

 

世界の外国為替市場における取引高で44%超の圧倒的シェアを誇る世界の基軸通貨USドルの支配する世界の資本主義経済が今後どうなっていくのか?が見極められるのは来年のことかもしれない。

 

レイ・ダリオ氏の分析では、既に米国の経済はピークを越えており、下降を延命することはできてもその勢いを反転させることは難しいようだ。

 

日本の経済は、米国経済のしっぽのようなものであり、既に20年以上前から下降期にあったものをアベノミクスが延命してきたようにと思える。

 

通貨の流通量でいえば中国人民元(RMB)の伸びが唯一著しく、全体の3.5%とはいえBP(英ポンド)に次ぎ5位に浮上してきている。今後も人民元の支配力は強まる方向にあるのだろう。

 

日本円の取引量は2022年時点ではまだEURに次いで3位にあり、全体の8.3%となっている。

 

現状において、日本経済という肉体が直面している最も大きなリスクは、日銀の信用不安によって外国勢が円を一気に手放すことと、日本国内に眠っている1,000兆円強の預貯金の海外流出だと考えられる。

 

そう考えると、今後は円高と同時に株高の到来、もしくは米国経済の崩壊という根拠のないシナリオがメディアによって拡散されることがポピュリズム的には好ましいと思われる。

 

果たして現実を我々国民はどう捉えるべきなのだろう?

 

残念ながら今年一年を振り返って、日本経済という日本国の肉体の健康が今後改善される要素をひとつたりとも見つけることはできなかった。

 

それでも、政府として現実的な最善策というものを例えそれがどれだけ国民にとって聞こえの悪く壮絶なプランだとしても提示されるべきであり、ポピュリズム的で国民をバカにした小手先の特効薬であってはならないと思う。