愛情について学ぶ④ ~未成熟な愛~ | 私、自閉症です。

愛情について学ぶ④ ~未成熟な愛~

『愛情について学ぶ』の記事は

愛するということ

フロム『愛するということ』 2014年2月 (100分 de 名著)

の2冊の本を参考にしています。(引用は一部要約しています)


フロムは、『人が人を愛するのは、孤独から逃れ、孤立を克服するため』だとしています。

けれど、一口に愛と言っても、成熟した形の愛もあれば、未成熟な形の愛もあります。

フロムは、未成熟な形の愛を『共棲的結合』と呼んでいます。


共棲的結合の生物学的な形』は、妊娠している母親と胎児の関係です。

母親と胎児は、2人であると同時に1人であり、ともにお互いを必要としながら生きています。


共棲的結合の心理学的な形』は、2人の体は互いに独立しているけれど、心理的には、母親と胎児に似た愛着を持つ関係です。


共棲的結合の受動的な形』は、服従、つまりマゾヒズムです。

自分に指示し、命令し、保護してくれる人物に従うことで、孤立感・孤独感から逃れようとします。


共棲的結合の能動的な形』は、支配、つまりサディズムです。

自分を崇拝する他人を取り込むことで、孤立感・孤独感から逃れようとします。


マゾヒズムとサディズムは、表面的には正反対の行動を取っていますが、どちらも、孤立感・孤独感から逃れるために相手に依存し、相手なしには生きていくことができないという点では、実は全く同じです。


このマゾヒズムとサディズムに似た関係が、共依存的な恋愛関係です。

恋愛の中で、相手を感情面で支配し、また、支配されることで、お互いへの依存を強めていきます。


たとえば、仕事をしない、お金にだらしがない、酒浸りといった問題を抱えている異性や、体の病や心の病で情緒不安定になっている異性ばかりを愛してしまうのは、『共棲的結合の受動的な形』と言えます。

頼られると、自分が必要とされているのだと感じて、自分を犠牲にしてでも相手のために行動してしまうのです。


また反対に、自分のためにあれこれ動いて、世話を焼いてくれる異性ばかりを愛してしまうのは、『共棲的結合の能動的な形』と言えます。

相手が自分のために動いてくれるかどうか試すことで、自分の存在価値を確認しているのです。


どちらも、お互いに愛し合っているというよりは、相手の存在によって、自分の存在価値を確認しているので、お互いに依存し合っているだけだとも言えます。


フロムは、こうした共棲的結合は、未成熟な形の愛だとしています。

これとは対照的に、『成熟した愛は、自分の全体性と個性を保ったままでの結合である。愛によって、人は孤独感・孤立感を克服するが、依然として自分自身のままであり、自分の全体性を失わない。』としています。


自己肯定感が低いと、他者に必要とされることで、自分の存在価値を確かめようとしがちです。

けれど、そんな風に、誰かを感情面で支配し、支配される関係は、お互いを苦しめるばかりです。

誰かに依存するのではなく、自分の足で自分の人生を生き、そして、他人も独立した1人の人間であることを尊重してこそ、成熟した愛に1歩近づけるのかもしれません。