愛情について学ぶ⑨ ~技術の習得に必要なもの~
『愛情について学ぶ』の記事は、
・フロム『愛するということ』 2014年2月 (100分 de 名著)
の2冊の本を参考にしています。(引用は一部要約しています)
これまで、愛情について理論的に考えてきました。
それでは、実際に、成熟した愛を身につけ、愛する技術を磨くには、どうしたら良いのでしょうか。
まず、フロムは愛の技術の習練について、次のように述べています。
なにかの技術の習練について学ぼうというとき、その習練を積む以外に方法があるだろうか。
愛することは個人的な経験であり、自分で経験する以外にそれを経験する方法はない。
目標への階段は自分で登っていかねばならない。
そして、大工でも、医術でも、愛でも、その習練を積むために、次の4つが必要だとしています。
一つ目は、『規律』です。
どんな技術でも、それを習得するためには、日々の生活の中で実践し続けていくことが必要です。
気が向いた時だけ取り組むのでは、なかなか上達はしません。
でも、つい面倒くさくなったり、忙しさにかまけたりして、練習をサボってしまいがちです。
フロムは、『楽しいと感じられ、すこしずつ慣れてゆき、それをやめると物足りなく感じられること』が重要だと言います。
私にとっては、ヨガがこれにあたるかなと思います。
忙しいとサボってしまうし、面倒くさい気持ちもあるんだけど、やらないと物足りないし、ちゃんとやると気持ちが良い。
今では、ヨガは、完全に自分の生活の一部になっています。
二つ目は、『集中』です。
フロムは、集中力を身につける方法として、呼吸法や瞑想(はっきりとそう言葉にしているわけではありませんが)を、すすめています。
本も読まず、テレビもラジオも聞かず、タバコも吸わず、飲食もせず、お喋りもせず、ただリラックスして座り、自分の呼吸だけを感じる。
そうして一人きりでじっとしていられるようになると、生活のあらゆる場面での集中力が向上すると言います。
今現在を集中して生きることができれば、一人で過ごす時間も、愛する人と過ごす時間も、どちらも自分にとってとても大切な時間になります。
自分の存在を認めて、自分の時間を大切にすることは、相手の存在を認めて、相手と過ごす時間を大切にすることにもつながっていきます。
フロムが、一人で過ごす時間を重要視していることは、以下の文章からも分かります。
もし、自分の足で立てないという理由で、誰か他人にしがみつくとしたら、その相手は命の恩人にはなりうるかもしれないが、二人の関係は愛の関係ではない。
逆説的ではあるが、一人でいられる能力こそ、愛する能力の前提条件なのだ。
三つ目は、『忍耐』です。
今は、性急に結果を求められることが多い時代です。
どんな技術でも、早く身につけることをよしとするような風潮さえあります。
けれど、一朝一夕で身につけた技術は所詮付け焼き刃でしかなく、自分の血となり肉となるぐらいまでしっかりした技術を身につけようとしたら、やはり長い時間をかけて積み重ねていくしかありません。
少しぐらい上手くいかないことがあっても、すぐに諦めてしまうのではなく、根気強く取り組んでいくことが大切なんだなと思います。
そして、何よりも大切なことは、技術の習得に『最高の関心を抱く』ことです。
何事も、関心がなければ長続きはしません。
どうすれば健全な愛を育むことができるのか、どうすれば愛し続けることができるのか。
『人を愛すること』に、日々の生活の中で関心をもって取り組んでいくことで、愛する技術が少しずつ向上していくのかもしれません。