「えすかるご」は良かった。
落ち着きのある店内、気配りのきいた接客だった。
気配りがあるかどうかは、食後のデザート、コーヒーが出てくるタイミングで分かる。
ここのウエイトレスは客の食事の進み具合をさりげなく見ている。
フォークを置いて二呼吸。
さっとデザート、コーヒーが出てくる。絶妙の間合いである。
食事が終わって10分経っても気づかれず、結局催促しなければならない店のなんと多いことか。
石川シェフが30年守り続けた梅月の味がここに生息していた。
実際は当時のソースより進化しているのだろう。
梅月のソースと全く同じではないのだろう。
味の記憶とは、料理そのものの外に、家族と出かけたハレの日の高揚感、待っている間に見た窓からの風景、腰かけたソファーの肌触り、食べながらの会話、手をつないでの帰り道・・・それらが綯い交ぜになって形成されているのだ。
シトロンもえすかるごも、梅月での幸福なシーンを想いださせるに十分な店だった。
何より山形人の琴線に触れる味を守った料理人と、それを受け継ごうとした料理人の心意気が嬉しかった。
昭和から平成へ、山形庶民の愛した味の系譜の物語である。
キッチンハウス「えすかるご」
山形県山形市飯田西1-2-30
TEL 023-625-1730
営業時間 11:00~15:00/17:00~22:00
15:00~17:00はカフェタイム
定休日 不定休
駐車場 あり
幻の味を訪ねて 了