山形夢横丁-445



「えすかるご」は良かった。

 
落ち着きのある店内、気配りのきいた接客だった。


気配りがあるかどうかは、食後のデザート、コーヒーが出てくるタイミングで分かる。


ここのウエイトレスは客の食事の進み具合をさりげなく見ている。


フォークを置いて二呼吸。


さっとデザート、コーヒーが出てくる。絶妙の間合いである。


食事が終わって10分経っても気づかれず、結局催促しなければならない店のなんと多いことか。




石川シェフが30年守り続けた梅月の味がここに生息していた。



実際は当時のソースより進化しているのだろう。


梅月のソースと全く同じではないのだろう。


味の記憶とは、料理そのものの外に、家族と出かけたハレの日の高揚感、待っている間に見た窓からの風景、腰かけたソファーの肌触り、食べながらの会話、手をつないでの帰り道・・・それらが綯い交ぜになって形成されているのだ。



シトロンもえすかるごも、梅月での幸福なシーンを想いださせるに十分な店だった。



何より山形人の琴線に触れる味を守った料理人と、それを受け継ごうとした料理人の心意気が嬉しかった。




昭和から平成へ、山形庶民の愛した味の系譜の物語である。




キッチンハウス「えすかるご」


山形県山形市飯田西1-2-30


TEL  023-625-1730

営業時間  11:00~15:00/17:00~22:00

        15:00~17:00はカフェタイム

定休日  不定休  


駐車場  あり



幻の味を訪ねて 了