初めての化粧(12/5) | 強いぞ!ゆいちゃんマン~未分化肉腫との戦い~

強いぞ!ゆいちゃんマン~未分化肉腫との戦い~

2010年2月、生後8か月のとき、未分化肉腫という聞いたこともない病気が発覚し,1才6か月で天国へ旅立ってしまった娘の入院生活を振り返ってブログを書いています。

主治医T先生の言葉の後、みんなの泣き声がより大きく聞こえた。

私の腕の中のゆいは死んだんだ・・・

それはいやというくらい分かっていた。

よくTVで見るような ガクって感じがあった・・・

でも、あったかかった。

顔は、ほんといつものゆいの寝顔だった。すごくかわいらしい寝顔。



私は、すぐにゆいを父ちゃんに抱っこしてもらった。

私1人でゆいを抱きしめててごめん、父ちゃんだって最後ゆいを抱きしめたかったはず・・・

父ちゃんは、私から大事そうに大事そうにゆいを受けとった。

ゆいを抱っこして、こういう言い方は変だけど・・・

おかしくなってた。狂ったんではないかと思った・・・

いつもはほとんどしゃべらない父ちゃんが、早口に次から次へとゆいに何か話しかけてる。

泣き叫んでた・・・


ゆいちゃん、目開けて。

ゆいちゃん、散歩行くよ。

ゆいちゃん、パピコ食べよ。

ゆいちゃん、プレイルーム行こう。


こんなことを叫んでたと思う。

最後は言葉になってなかった・・・

看護師Mさんと旦那のお母さんが落ち着かせてた。



当たり前だけど、ゆいのこと大好きだったんだなぁって思った。

それから家族みんな順番に抱っこしてもらった。

入院してからのゆいを抱っこしたのはみんな初めてだ。

弟はこの時部屋に到着した。

みんなが代わる代わる抱っこしてるのを見て、まだ生きてると思ったらしい。

最後に私が抱っこした。



看護師Mさんが

「ゆいちゃんお風呂に入れてあげよう!」って準備してくれた。

私が服を脱がせた。

いつものように父ちゃんが体を支えて、私が泡をつけて洗う。

ゆいの体は小さくて、細くて・・・

頭もピカピカにした。指先まできれいに洗った。

Mさんが、「ゆいちゃん、何着せようか?」って聞いてきた。

私は、全く考えてなかった。

着替えを入れてるケースを開けてみるが、パジャマしかなかった。

パジャマでいいわ・・・これが一番ゆいらしいって思った。

だから、一番上にあったユニクロのピンクのパジャマを渡した。

ゆいはいっつもパジャマだった。

最後くらいおしゃれした方がいいのかなって思いもあったけど・・・パジャマしかなかったし・・・ゆい、ごめん。(笑)



オムツをして、パジャマのズボンをはかせた。

Mさんが、

「お母さん、これから胸に入ってるCVカテをとらせてください。」


「分かりました。」


T先生、N先生、Mさん、Hさんがゆいを囲んで処置をはじめた。

私たちはそれを無言で眺めていた。

1度CVカテが切れてからは、それまで以上にいろいろ気を使ったな・・・

あんなに大事な、大事にしてたカテを抜くなんて・・・

複雑な気持ちだった。

CVカテはなかなかとれないようだった。

亡くなった後だから??

T先生手が震えてるようだった。

いろいろされて時間もかかり、ゆいが痛そうに見えた。

それを見てるのがいやだった。

どうにかとれたみたいで、そこを大きなガーゼでおおった。

パジャマの上を着せてもらい、Mさんが、


「これからいろいろ処置をさせてもらいますけど、このまま部屋におられますか?それとも部屋の外で待たれますか?」


なんかCVカテをとるのを見ていて、これ以上ゆいに何かするのを見てられなかった・・・

即答した。


「外で待ちます。」

「ゆいちゃんにお化粧させてもらってもいいですか?」


「はい」


「どんな感じがいいですか?」


「まかせます。」


そう言ってみんな部屋から出て、ドアのすぐ外で待った。

ゆいを1人にさせてしまったな・・・

私は、床に座り込んだ。

さっきまで立ってたけど、足がガクガクだった。

もう涙も出なかった。

ただ喪失感でいっぱいだった・・・

何も考えたくなかった。



20分後呼ばれた。

部屋に入ると、ゆいが胸の前で手をくんでいた・・・
ちゃんと上手に手と手をからませて・・・
もちろん、看護師さんたちがしてくれたんだけど。

その姿見て、あらためて実感した。

ゆいは本当に死んだんだって。

顔は化粧をしてもらってた。

化粧はゆいの担当看護師Hさんがしてくれたみたいで、美人なHさんと同じ化粧に見えた。

ほっぺもほんのり赤くて、表情が出てきた・・・

ツルツル頭にも何かつけてくれたのか、磨かれたようにピカピカに光ってた。(笑)

「ゆい、かわいいよ。」って頭を撫でた。



みんなで荷物をまとめた。

それから、先生たちも来て1人ずつ順番にゆいの口に水をつけてやった。

何を使って飲ませたかは忘れたけど・・・ゆいは久々の飲み物だったと思う。

その後、霊安室に行くという。

どうしても行かないといけないらしい・・・

ゆいは私の抱っこで行くことにした。

そっと抱っこすると、さっきと同じようにあたたかかった。

ゆいの頭に白い頭巾がかぶせられた。

顔が見えないように・・・




先生たちを先頭に、ゆいと一緒に家族みんながついて行った。

エレベーターに乗る。

MさんHさん以外の看護師さんたちが見送ってくれた。

12階のこの病棟ともお別れだ・・・

もうここに来ることはない・・・

何階かに着いた。

あとは、暗い廊下をひたすら歩いた。

ここはどこなんだろう??

ゆいと病院中散歩してきた。

知らないところはない!ってくらい。

入っていんだろうかっていうところもウロウロしてたのに、ここは知らない・・・

ただ、窓から見える景色が地面に近くなった。

またエレベーターに乗って下に降りた。
廊下の先にその部屋はあった。

喪服を着たおじさんが、ゆいと私を見て悲しそうな顔で手を合わしてきた。



なんか明るい正面にゆいを寝かせた。

私は、すぐに白い頭巾をとったと思う。

霊安室には、ゆい、家族、主治医T先生、研修医N先生、K先生(大事な話の時だけ姿を現す)、M先生(ゆいの最初の主治医の1人)、看護師Hさん、Mさん、今日の夜間担当の看護師長さんがいた。

みんなが順番にゆいに手を合わした。

私は、全身の震えが止まらなかった。

はやくはやくゆいをこんなところから出してやりたいって思ってた。

儀式みたいなのが終わって、やっと家に帰れることになった。

「ゆい、家に帰るよ!」ってそっと抱っこした。

白い頭巾ももういらない。

弟が指示通り、霊安室近くのドアに車をまわしていた。

私は、先生たちの顔も見れなかった。お礼の言葉もろくに言えなかった。

ただ車に乗り込んだ。


病院からどんどん遠ざかって行く。

お世話になった病院だけど、はやく見えなくなってほしかった。


ゆいは眠ってるようだった。