毎度、気の遠くなるような古い話で恐縮です。


昨年の3月、さっちんお気に入りの入り江の奥に佇む小さな美術館で、とあるイベントがあった。


アートに囲まれながら、樋口一葉作品の朗読会というものだった。


ほんのごく僅かだが一葉と縁のあることから、その作品をさっちんに読んで欲しいと常々思っていたが、ご存知の通り彼女の作品は文語体で書かれており小学生が読み切るには非常に難しい。


図書館をハシゴしても現代語に訳されているものがなかったので諦めていた。


そんな時に偶々、目にしたイベントの案内がこれだった。


朗読ならば聞けばよいだけだし、現代語を用いて下さるだろうと。


お札以外で一葉に触れさせるには丁度よい機会だと思った。


そこで朗読をして下さったのが奥山眞佐子さん だった。


奥山さんは一葉の作品を中心に一人芝居や朗読会をされている女優さんで、これは講演の後で知ったのだが山梨県甲府市の出身だ。


朗読は一葉の「にごりえ」でしかも敢えて原文のままの文語体で語るスタイルを貫いているそうで、さっちんに理解できるものなのかと思ったが、段々慣れてきて最後はちゃんと分かったと言っていた。


講演が終わって駐車場に向かっていると、奥山さんが出てきて声を掛けて下さった。


難しい話を子どものさっちんが一生懸命聴いていた。

理解できただろうか?どうだったか?といったことで、私はここに来た経緯をかいつまんで話し、さっちんが概ね理解していることと実家は山梨だと話したら奥山さんは私の手を取って自身も同郷だと話してくれた。


郷里からこんなに離れた場所で巡り合ったのは一葉が引き合わせてくれた縁だと喜んで下さった。

厳しいスケジュールで直ぐに東京に戻らなければいけないと仰っていたが、美術館のロビーに戻り講演の舞台を静かに力強く飾って下さった画家の橋本清さん らと暫し歓談させていただいた。


奥山さんは、華奢な身体をしていらっしゃるのに強いオーラを放たれて、とても素敵な方だった。


それから1年以上も経ち、すっかりご無沙汰してしまった。



今、NHKの連続テレビドラマでは『花子とアン』をやっている。


山梨出身の私なのでオンエア前から楽しみにしていたが、第一話から見逃すまいとさっちんと共にTVの前に正座する勢いで食い入るように見ているとテーマソングが流れるタイトルテロップの最後の方に


山梨ことば指導 奥山眞佐子


と、奥山さんのクレジットが入っているではないか。


さっちんと二人して、思わず「てっ!」と驚いたのは言うまでもない。


強いオーラを放ち、いつも「こぴっと」した印象の奥山さん、ご活躍をお祈りしております。




因みに、さっちん。一葉と誕生日が同じです。