大変遅ればせながら、以下の小説をウソップ様に捧げます。


月が静かに照らす海面を、サウザンド・サニー号は、穏やかに進んでいる。
そして、その船内では、ある作戦が密かに、そして、確実に進んでいた・・・。

その日、偶々、起きていた男2人は密かに、ロビンに誘われ、女部屋へと入って行った。
その内の、1人は、サウザンド・サニーにおいて、唯一食を司る男・サンジである。
そして、もう1人は、医者・チョッパーであった。
ナミは、この2人を前にして、相談を持ちかけた。

「チョッパー。なんとか、一日中、どんなに騒々しくしても
 起きる事の無い眠り薬を作れないかしら?」
「出来るさ。でも、どうして・・・」
「サンジ君、その眠り薬を悪いんだけど、一皿だけ混ぜて欲しいんだけど、
出来るわよね?」
「ナミさんの言う事なら、どんな事でも。でも、ナミさん・・・・」
「じゃあ、頼んだわよ。的確に、ウソップだけを眠らせてね」
その返事に、2人の男はようやく事の次第に気がついた。
「うん、OK解った」「ナミすわーん、俺に任せて~」


翌日の夜、
ウソップは、巧妙に作られた罠にはまり、深い眠りへとついた。

その一方、他のクルー達は、場所をダイニングからアクアリムウバーへと移し、
翌日の作戦を練っていた。
「フランキー、もう例の物は準備出来てるんでしょうね?」
ナミは、サンジとチョッパーに任務を言い渡す前に、
既に、フランキーに、ある重要な任務を任せていた。
「あう。スーパーに出来上がってるぜ。」と、フランキーは言いながら、
白い包みを、テーブルの真ん中にドンと置いた。
「スーパーな、俺様の最高傑作よ」
白い包みが開かれたとき、その場に居合わせたクルーは感嘆の声を漏らした。

「あら、素敵ね。」
「おおー」
「かっけー。」
「なるほどな」
「なかなかだな」

「で、どうだ?」
「うん、完璧。いい出来だわー。じゃあ、これを・・・」



翌日、自分の身に何が起こったのか、知りもせずに、
ウソップは夢から現実へと世界を変えた。
そして、何故か、自分のいる場所が、ダイニングから男部屋へと変わっているのに気がついた。
何が起こったのか思い出そうにも、彼には、思い出す事は出来なかった。
最後に覚えているのは、サンジの料理に舌鼓を打っている事だけだったからだ。


急に、誰かが走ってくる音が聞こえた。
「ウソップ、起きたかー?」
扉をバンと開け、船長のルフィーが顔をのぞかせた。
「あー、ルフィー。どうした~?まだ、夜中だぞ~」
「キシシ、良いもんがあるんだ。こっち来いよ」
ルフィーは、ウソップを連れると、アクアリムバーと女部屋以外を丁寧に一部屋ずつ回って行った。
「あれ、ここじゃねぇな」
「あれ、ここでもねぇ」
「ルフィー、まだか~?」
とうとう、最後のアクアリムバーへとたどり着き、ルフィーが扉を開けると
パンパンパン
盛大な音が鳴り響いた。
目の前には「Happy Birthday ウソップ」の文字が書かれた垂れ幕がかかっていた。
「スーパー、目出たいぜ」
「突っ立ってないで、中に入んなさい」
「ウソップ、おめでとう(キラン)」
「おめでとよ」
「ふふ、お誕生日おめでとう。長鼻君」
「クソめでたいな」
仲間達は、口々に祝いの言葉を彼に捧げた。

「ウソップ、おめでとな。これは、みんなからのプレゼントだ。」
「これ・・・・あけても良いか?」
ウソップは、視線を落としたまま尋ねた。
「いいぞ。」
リボンを静かにはずすと、小さな、しかし、繊細な『メリー号』のプラモデルが現れた。

「メリー・・・・。」

ウソップは、涙を腕で強く拭って顔を上げたが、
本人でさえも、その涙を止める事は不可能だった。