- ジョウゼフ・アンドルーズ〈上〉
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オウィディウスに引き続き、本日2度目のレビュー。
ヘンリー・フィールディング『シャミラ』 と同じく、サミュエル・リチャードソン『パミラ』 のパロディ小説です。
しかし、最初はパロディで、上巻の真ん中あたりからパロディではなくなり、下巻の真ん中あたりからまたパロディになるという、まとまりのわるーい小説。
その分上巻途中からはっきり言ってつっまんなくなっていて、
上巻を読み終えてから下巻を読むまで1カ月近くかかってしまいました。
私はパロディを期待して読んでいたからそう感じたけれど、
評論家が読むと逆にその真ん中部分が一番フィールディングらしく感じられるようです。
(・・・って、パロディじゃないんだから当たり前ですよね。でも、その「フィールディングらしい」部分が一番つまんないって問題だと思うのですが)
また、逆に最初と最初は蛇足、と感じられる方もいるみたい。
フィールディングの作品は決して面白い小説ではないと思うなぁ・・・・『トム・ジョーンズ』もそうですが。
モームはこれを世界の十大小説に選んでいるけれど、まったく理解できない。
モームの方がずっと面白いもの。
と言うと誤解を招きそうですが、この作品自体は結構面白いと思うのです。
パミラがどういう話かを知っていればね。
でも、この程度なら誰でも書けるんじゃないかな?というのが正直な気持ち。
どのあたりが文学的に良いのかが分からない~~~~。
のですが、『パミラ』のパロディとして読むとまあ面白いんですよね。
褒めてるのかけなしてるのかわからないけれどヽ(;´ω`)ノ
主人公のジョウゼフ・アンドルーズは、パミラ・アンドルーズの弟という設定。
パミラの弟だけあって、見目麗しい好青年。
ジョゼフが奉公している屋敷の女主人であるブービー夫人も彼に目をつけ、言い寄りますが
貞節な(笑)ジョウゼフは相手にしません。
ここでジョウゼフ、「私はあのパミラの弟ですよ!?」といったことを言う!
そして女主人に貞節を語る!
おお。男性も貞節って、言うんですね。
初めて聞きました。
なんかまあいろいろあって、紹介状も持たされずに家から追い出されてしまいます。
ジョウゼフにはファニーと言う、これまた美しい恋人がいて・・・・。
非常~~~に風刺が多い小説です。
下巻にパミラが登場したりもします。
ファニーとジョウゼフでは身分がちがうわ、なんてことを言ったりもする。
いや、よく言うよね、パミラ(´∀`)
お気づきだと思いますが、なんと、パミラが結婚するブービー氏と、ジョウゼフの元女主人であるブービー夫人は甥と叔母の関係。
フィールディングはくどくどくどと結構うるさい人なので、
ってこの時代~ヴィクトリア朝の語りの部分ってやたらくどくどくどくどしてますけどね。
その「くどくど」も、面白さの一部ではあります。
以下抜粋。
読者よ、余はここで比喩を用いたいと思うのであるが、それは二つの理由からさし控えることにする。
一つは、このあたり話の進行が速やかで、比喩はその妨げになろうということ。
ただしこれはたいしたことではない、そういう妨害の先例は多々あるのである。
第二の、はるかに大きな理由は、われらの目的に適切な比喩を発見しえないことである。
あなたが一番進行を妨げてるよ!!(´∀`)
←このあたりもパロディなんでしょうけれど。
この、読みやすい訳なんだけど語り手の部分だけちょっと古い感じが絶妙!
スリップロップという、ブービー夫人の召使が言い放つ台詞。
本当に、奥様は召使のことをまるでキリスト教徒とは人しゅう(人種)がちがうようにおっしゃいますね。
召使にだって上流の方たちと同様、ちゃんと肉もあれば血もあります。上流の方の血や肉よりも上等でないまでも同じだということはアンドルーズさんがよい証拠です。
これは『ヴェニスの商人』のパロディにもなっていると言えるかもしれませんが、
ちょっとこの台詞はドラマチック・アイロニーぽくなってますね。
それでさらに、ファニーと結婚したがるジョウゼフと、ブービー氏(パミラの夫)とのやりとり。
「なるほどあの人は美人にちがいないが、美しいというだけではたよりない」
「いや、」とジョウゼフ。
「美しいということはあの人の美点の中で最下位のものです。
およそ美徳と名のつくものであの人が持っていないものはありません。」
「君の判断ではまだ心細いよ。が、仮にあの人が数多くの美徳を持っているとしても、それくらいの婦人は、生まれや財産が数等上の人たちにもいるよ。」
ですって!!!!!ですって!!!!!!(爆笑)
このあたりは、『パミラ』を読んでいると面白いですよね^^
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