無題
静まり返るスタジオ
乾燥しきったリードを口に含み、ゆっくりと水分を行き渡らせる
急激に水分を与えるとクラックの原因となる…
この時って、子供がアイスクリームの棒をくわえ込んでいるようで、何だか可笑しくて微笑んでしまう自分に気付く
新しく卸したリガチャは18金の削り出し
何年か前にフランスセルマーにオーダーして作らせた物
ダブルボルトで固定するタイプでありながら、今まで使っていたピンクゴールドの物よりもシャープで確実な音色を約束してくれる
これにたどり着くまでに何十のリガチャを使って来たことか…
リード慣らしの為のロングトーン
下ろしたばかりのリードゆえ、必要最低限の負担しかかけない
空気の穏やかな振動
まだ馴染んでないゆえの音色に惑わされない
これを一ヶ月以上繰り返し、ようやく使えるか使えないかの判断を降す…
一枚のリードを完成させるまでに二ヶ月弱…
それまでに何枚のリードを釈迦らせれば良いのやら
それでも満足行くリードには出会えない
どの楽器奏者にしてもそうだろう…
因果な商売だなといつも思う