こんばんは (*´∀`*)
夢幻の更新です。
話が複雑になってきたので、11話までのおおまかなあらすじを書いてみました。
読まれる方はこちら からどうぞ♪


12話は、断事官の思惑編です。どうぞ!





12






「チェ・ヨン大護軍。久しくございますな」
「ええ。思いもよらぬ事でしたゆえ、何も…もてなしなどできませぬが」
「もてなしなど結構。早速だが、こちらの要件を述べさせていただきたい」
「この地に関する取引ならお断り申し上げる」
「今回はそれが要件ではありませぬ。医仙…あの女人はどちらに?」

 ヨンは訝しげに断事官を見つめた。
 医仙が天界に帰ったという話はこの二年で既に近隣に広まっているはずだ。勢力は衰えたとはいえ未だ大国である元の断事官が知らないはずがない。

「知っておられるでしょう。医仙が天界に帰ったと」
「話は聞いてございますが、それは真の事でしょうか?あの女人がそう簡単に帰るとは思えませんが」
「なにを疑われているのか存じませぬが、医仙は天界に帰りましたゆえ、ここにはおりませぬ」

 そう言うと、その言葉が嘘でないか確認するかのように断事官はヨンをじっと見つめた。

「では、大護軍がここに留まる理由は?奪還した土地の警護など近衛隊がするべきではないはずです」
「その理由をお教えする必要が?」
「なにやら大護軍殿はこの地の奪還に力を入れていたと。つまりこの、天穴の地を——」

 ヨンは内心驚いたが、それを悟られないように努める。なぜ断事官が天穴を知っているのか。

「奪還した地で諍いが絶えぬのは知っておられるはず。私が残っているのはそのためです。断事官殿こそ何故医仙に、そして天穴に拘られる?」
「では、大護軍はもはや天穴には関係ないと?」

 こちらの質問には答えずに、そう言うと断事官はすっと立ち上がり「要件はこれだけです」と言ってヨンに背を向ける。だが、部屋を出る際に振り向いて笑った。

「ああ、そういえば大護軍。なにやら天穴の周りに不穏な動きがあるようです。二度と天界人が来ぬように…と天穴を壊そうとする輩がいるという話をご存知で?まぁ、ですが関係ないのでしたら余計なことを申し上げました」

 そう言い残して、今度こそ部屋を出て行った。
 後ろで聞いていたチュンソクが早急に動き出す。

「隊長!天穴に兵を向かわせます。断事官を捕らえますか?」
「いや、今断事官を捕らえても意味はあるまい。おそらくは刺客でも雇ったのだろう。急ぎ天穴に向かう。後を頼む!」
「は!では断事官には後をつけさせます」

 ヨンは外に出て馬に飛び乗り天穴の地に駆けた。




 その姿を、乗り込んだ馬車から見ていた断事官は、中に潜んでいた刺客に命令を出す。

「先程教えた場所で奴と戦え。だがくれぐれも殺すでない。怪我でもさせて、しばらく時間を稼いだら引いていいと伝えろ」

 断事官は厳しい瞳でその首に駆けられた懐中時計を握りしめ、ヨンの駆けて行った後を見つめた。

 最初から医仙が帰ったなど信じていない。

 自分が天穴を通りこの時代へ来たのはいつだったか。始めは驚き途方に暮れたが、知識を上手く利用して断事官にまでのし上がったのは己の実力だ。

 時代を知っている…これほど切り札になる知識はなかった。歴史を変えないよう上手く流れに乗って、あとは強い者に味方すれば自ずと金は入ってきた。その知識がありながら、この世界を簡単に捨てる事など出来るはずがない。
 だから、ウンスが帰ったなどというのは到底信じられる事ではなかった。

 だが、今となっては大国であった元は落ち目にさしかかっている。ここらで手を引くのが得策だろう。次に懐に入り込むべきは誰かを考えなくてはならない。

 そこで思ったのがウンスの事だ。医師として優れた技術を持ち、歴史の事に関しても多少の知識はある。手を組む相手としてこれほどに良い人間はいない。だが、それと同時に敵にすれば厄介な相手だ。

 自分は歴史を変える事などは決して望んでいない。
 歴史が変わってしまったら知識が役に立たない。身の振り方が分からなくなる。

 だから、もし手を組まないのであれば…殺した方が良いと、そう思ってここに来たのだ。
 
 だが大護軍がそう簡単に医仙に会わせないであろうことは容易に予測出来た。
 しかし、大護軍が危険な目に遭う、もしくは怪我でもすれば、確実にウンスは姿を現すだろう。
 本当に天界に帰ったのであれば現れはしないだろうが、それならそれでかまわない。

 断事官は己も天穴に向かうべく、馬車を走らせる。後ろから見張りが付いてきているのは気づいているが、あくまで自分は「何もしていない」のだから安全は保障されている。

 ————さぁ来られよ、医仙。









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