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7月6日(水)の特別講座の様子をご紹介いたします。
8回目を迎える今回も経済学博士の原勲先生をお招きし、「資本主義の未来~もうひとつの資本=ソーシャルキャピタル論~」をテーマに講義をしていただきました。



「ソーシャル・キャピタル(Social Capital)」とは、日本語に訳すと「社会資本」です。
では「ソーシャル・キャピタル」とは何なのでしょうか。

そもそもソーシャルキャピタルとは、教育社会学者のデューイが使用し始めたもので、地域のPTA活動などを指していたとされています。
明確な定義が無いままこの言葉はしばらく使われませんでしたが、フランスの社会学者ブリュデューがアルジェリアでの自身の分析を基に、社会資本を文化資本、経済資本、社会関係資本(=人脈)の3つに分類しました。

その後教育に大きな関心を寄せていたアメリカの社会学者コールマンが、ソーシャルキャピタルの概念を発展させました。彼は国と家族の間に存在する中間組織の人間関係に注視しました。この中間組織とは、地域コミュニティ組織やボランティア組織などのことです。人と人のつながりである社会資本が衰退し、そこから起こったアメリカの過度な個人主義台頭を、コールマンは批判しています。

そしてアメリカの政治学者パットナムは、20年にも亘る研究でイタリアの北・中部と南部を比較し、社会資本がより発達した北・中部では、南部よりも高いレベルの民主主義のパフォーマンスが見られ、市民的な活動が民主主義に大きな影響を与えていることを明らかにしました。
彼は、地域のパフォーマンスを決定するのは社会的関係資本であり、その要素は信頼、互恵、規範、社会的ネットワーク、情報の入手経路、帰属性であると述べています。

社会のネットワークの中でお互いに協力し合うことが、結局は個人の幸福にも繋がって行くはずです。
しかし、残念ながら人間は利己的な生き物でもあり、自分の利益だけを優先したり、自分のものだったら大切にするけれども共用のものだったら我先にと取りつくしてしまう、という一面もあります。
これは一見自分だけが得をしているように見えますが、実は社会資本の充実にはマイナスでしかなく、そうなると結局社会全体が損をすることになります。
社会全体のマイナスはその社会に存在する個人のマイナスに繋がります。つまり身勝手な行動は、その本人を含め、誰のためにもならないということが、社会学的にも証明されるわけです。
アダム・スミスも「個人の利益=社会の利益」であるとしています。



よく話題にもなる「ゲームの理論」も人間の行動パターンを探る一つの手段です(→1番上の写真)。
2人の囚人が2人ともお互いを裏切らなければ最高点をもらえますが、2人がお互いを裏切れば最低点になってしまいます。
最高点を取るために不可欠な要素はお互いへの信頼ですが、その信頼を保つためにはコミュニケーションを繰り返していくことが大切です。
これは社会の中での人間関係にも言えることではないでしょうか。

ある地域のソーシャル・キャピタルが豊かになるということは、その地域の政治意識、教育活動、治安、経済、健康などにも良い効果をもたらし、更に大きな地域である市、都道府県、国、世界全体の質が向上していくことに繋がります。
現在は国や地方自治体も、こういった地域の力に注目しています。
人との信頼関係を構築することが、結局は効率の良い社会を創りだすということなのです。

世の中にある殆どの資本は、使えば必ず減ります。
しかし社会的関係資本は、使用することでその価値が増大する一種の道徳資本です。
使えば使うほど増える魔法のような資本ですから、どんどん使ってみたいと思いませんか。

今回の参考文献です。


次回の特別講義&茶話会は7月20日(水)10:00~12:00です。
この後、こちらの講義はしばらくお休みさせていただきますので、ご了承ください。
お問い合わせ、お申し込みは827-6335までお願い致します。
Written by Miki Moriya