2017年シーズンに向けて、布部陽功新監督が就任した京都も始動しました。
シーズンの幕開けということで、まずはこのオフでの選手の出入りをチェックし、今季の選手編成について見ていきましょう。

まず選手の出入りは以下のようになっています。


(IN)
小屋松知哉 (完全移籍:名古屋グランパス)
望月嶺臣 (完全移籍:名古屋グランパス)
田中マルクス闘莉王 (完全移籍:名古屋グランパス)
永井建成 (完全移籍:ロアッソ熊本)
伊東俊 (完全移籍:モンテディオ山形)
ハ・ソンミン (完全移籍:蔚山現代/韓国)
ケヴィン・オリス (完全移籍:仁川ユナイテッド/韓国)
湯澤聖人 (期限付き移籍:柏レイソル)
岩崎悠人 (新卒:京都橘高校)
仙頭啓矢 (新卒:東洋大学)
大野耀平 (新卒:常葉大学)
麻田将吾 (昇格:京都U-18)
島村拓弥 (昇格:京都U-18)
大黒将志 (期限付き移籍から復帰:モンテディオ山形)


(OUT)
矢島卓郎 (現役引退)
山瀬功治 (契約満了:アビスパ福岡)
有田光希 (契約満了:愛媛FC)
國領一平 (契約満了:長野パルセイロ)
岩沼俊介 (契約満了:長野パルセイロ)
佐藤健太郎 (契約満了)
和田篤紀 (契約満了)
ダニエル・ロビーニョ (契約満了)
堀米勇輝 (完全移籍:ヴァンフォーレ甲府)
菅沼駿哉 (完全移籍:モンテディオ山形)
キロス (完全移籍:レゼンデ/ブラジル)
アンドレイ (期限付き移籍期間満了→完全移籍:シャペコエンセ/ブラジル)
山田元気 (期限付き移籍:レノファ山口)
沼大希 (期限付き移籍:ガイナーレ鳥取)
永島悠史 (期限付き移籍:FC岐阜)
齊藤隆成 (期限付き移籍:水戸ホーリーホック)


(その他)
磐瀬剛 (期限付き移籍期間延長:FC岐阜)
大西勇輝 (期限付き移籍期間延長:奈良クラブ)
荻野広大 (期限付き移籍期間延長:カマタマーレ讃岐)
石田雅俊 (期限付き移籍/昨季はSC相模原に期限付き移籍:ザスパクサツ群馬)
三根和起 (契約満了/昨季はアルビレックス新潟シンガポールに期限付き移籍:ヴァンラーレ八戸)
杉本大地 (完全移籍/昨季は徳島ヴォルティスに期限付き移籍:横浜Fマリノス)


昨季終了時点から16人退団し、14人が加入しました。
まだ公式には出ていませんが、もう一人外国人選手の獲得にも動いているようですね。
昨季オフも入れ替わりが多かったですが、このオフもかなり出入りの激しい印象があります。

各ポジション毎の話は後に回すとして、まずは全体を見渡した時のトピックについて書いていきます。


若手選手の期限付き移籍

いきなり今季京都にいない選手たちのことについて書くのもどうかと思いますが(笑)
クラブの状況を考えると大きなトピックに思えるのでここから。

高卒2〜5年目の選手のうち、田村亮介を除く全員が期限付き移籍することになりました。
昨季から引き続いて期限付き移籍に出る選手も含めれば総勢8名。
京都は元々、少なくとも高卒5年までは面倒を見るのが基本方針のようで、出場機会がなさそうな場合は積極的に外へ出しています。
その意味では今季もそれなりの人数が修行に出るだろうと思っていましたが、ちょっと予想を越える人数になりました。
特に、磐瀬、永島、荻野あたりはポジションバランスやこれまでのパフォーマンスを考えると、京都にいても出場機会を得られそうに思っていたので。

この辺りは今季のクラブ事情が影響していそうです。
昨季は補強費に多くを費やしたために赤字決算となる見込み。
一方で今季も人件費は高めに設定し、赤字覚悟でも昇格を狙うスタンスであることがクラブ首脳陣から発表されています。
その反面、今季昇格を逃すと、Jリーグのライセンス規約を満たすために来季は若手選手を主体として予算規模を縮小することになるとのことです。
いきなりの方向転換は難しいので、昇格を目指したプランを進めるのと同時に、来季に向けたセカンドプランも準備しているのが実際のところでしょう。

つまり、もし今季昇格ができなかった場合を考えると、現在18〜23歳あたりの若手選手たちから来季の主力を担える人材を出しておきたいところです。
そうなると、レギュラーを奪取でき得る環境に身を置かせ、より多くの試合経験を積ませたい・・・それ故の期限付き移籍の多さと見て良いでしょう。

その点では、よく練り上げられているようにも見えます。
移籍先のクラブも京都に縁のある監督やスタッフがいるところが多く、送り出す側としてイメージもしやすいし信頼もできる環境。
また選手側にとっても、各々の足りない部分を補ったり、強みが発揮しやすかったりしそうなチームをチョイスしていて、それぞれの成長の助けとなりそうなところも良いですね。

生え抜き選手が期限付きとはいえ、一気に京都を離れることに危うさや不安を感じるところも出てきていると思います。しかし個人的には、チーム事情と現状の彼らの実力、そして将来に向けての成長度合いを考えると悪くないやり方かな、というように思っています。
京都でずっと過ごしていても、特にユースからの昇格選手は伸び悩みそうだからという考えもあるので・・・。
見方を変えれば、手薄なポジションであっても、選手個々の成長を優先しているところがあるので、自身の成長を第一に考える若手選手獲得のアピールポイントに将来的になってくることも考えられます。
ただし、特に4〜5年目を迎える選手たちにとっては、今季期限付き移籍先で目に見える結果を出さなければ、先々にかなり不安が残るという自覚も必要でしょう。
厳しいことかもしれませんが、何年も「若手」でいられるわけではない年齢ですし、それもプロ選手として逃れられない側面ですから。



有望な新卒選手の加入と「地元志向」


ここまで高卒2〜5年目の話を書いてきましたが、高卒1年目については京都でプロとしてのスタートを切らせるのも慣例となっています。
とは言え、なかなか高卒一年目で出場機会を多く得ることは難しくなっているのが実情。

しかし今季は、各クラブとの争奪戦の末に京都橘高校からU-19日本代表の岩崎が加入しました。
U-20W杯を見据えた代表活動が主体となりそうで、京都でのアピール期間は限られたものになりそうですが、世代トップクラスのストライカーの加入は楽しみなところです。
高卒一年目の選手はたいてい体ができあがっていないので、フィジカル要素で厳しい面が多くなるのが定番。しかし岩崎の場合は、高校選手権予選や全国大会の市立船橋高校戦を見る限りでは、かなり体が強そうで、それでいてスピードを武器にしている様子。
ですので、一年目から出番を得られる可能性も高そうですね。
また、ユースから昇格してきた2人のうち、島村は同ポジションの選手が少ないため、アピール次第で出番が得られそうにも思えます。
高卒選手だけでなく、大卒で加入した大野と仙頭も早速練習試合で好アピールを見せたようで、心強い限り。

今季の若手選手の加入についてもう一つ大きなトピックは「地元志向」でしょう。
岩崎やユースからの昇格組に加え、仙頭、永井、小屋松、望月と京滋地区出身者が揃います。
(今回は京都橘に偏ってますけど・笑。でも最近京都出身でプロに行った選手は多くが橘出身だから仕方ないところも)
クラブとして、安定して有望選手を獲得することをはじめとして基盤を固めていくためには、地域との結びつきを強めなければならないことは確か。
今はスポンサーから安定して資金が得られていても、恒久的なものとは考えない方が良いですし。
その一環として、地元の有力高校出身選手を獲得するのは良いアピールでしょう。
上述したように、高卒出身選手に対して京都はかなり手厚いサポートを行っていますし、その点も併せて有力選手への訴求力としていきたいところ。
実際に今季は有力な新卒選手が獲得できていますし、今季だけでなく将来的な観点も見据えられているのかな、と思います。
それこそ上で書いていたように来季に若手中心路線になったとしても、という準備も整えているとも言えますね。


左利きの少なさ

退団選手と加入選手のリストを見ていて気になったのは選手の利き足。
佐藤、堀米、國領、岩沼といった選手が退団したことにより、左利きの選手が一気に減りました。
今季の所属選手で左利きなのは本多と麻田だけでしょうか。
左利きの選手が少ないと、左サイドで攻撃に幅が出づらくなってしまいやすくなります。右利きの選手が左サイドに入ると中へボールを持ちがちですからね。
一昨年も左サイドバックに下畠や磐瀬が入らざるを得なくなって困ったことも記憶に新しく、今季も同様の問題が起きないか心配なところではあります。
そういえば退団した4人はすべて昨季加入した選手ですね(國領はレンタルからの復帰)。
一昨年の反省はなかったのでしょうか・・・。


主力選手の退団とベテラン選手の加入

退団選手の話が出ましたので、他も見ていくと、大きいのは山瀬と菅沼の退団でしょうか。

堀米に関しては、チームとしては残したかったでしょうね。しかし甲府からすると特別な選手でもあり、本人もやはり甲府でやりたい気持ちもあったのだろうなという感じです。
敬愛する石丸監督が退任ということも影響したでしょうし。
この辺はいろいろ思うところはありますけど、最終的に仕方ないかなという感じはします。
一選手の意向でチームを動かすわけにも行きませんし、ユース昇格選手が特別扱いされるのはどこでも同じでしょうから。

昨季のトップスコアラーでもあり、限られた人員となっている中盤の攻撃的なポジションを務められるという点で山瀬の契約満了は意外なところ。
もちろん負傷の影響もあって、90分持続できないところはありましたが、それでもチームの主将まで務めたプレーヤーですし、奥様もチーム事業に関わっていたことから引退までプレーするのが既定路線だと思っていました。
また菅沼も、加入当時はバックアッパー的な立ち位置だったと思いますが、2年連続でCBの主軸としてプレーし、特に昨季はなくてはならない存在でした。

こういった点で思いがけない山瀬と菅沼の退団でしたが、セットで考えるべきは新たに入ってきた選手でしょうか。特に大黒と闘莉王でしょう。

まず大黒については、昨季の山形への期限付き移籍の経緯が経緯でしたので、復帰は正直なところ意外でした。
大黒自身、石丸清隆前監督との確執を隠そうともしていませんでしたし、一方でその姿勢を山中大輔社長が(実名は出さずとも明らかに)批判する状況でしたからね。
実際のところどういう流れで京都復帰となったか分かりませんが、エリア内で特徴を出せるFWが昨季いなかったのは事実です。
負傷に苦しんだものの、昨季の山形でも相変わらずのシュート感覚を見せていましたので、今季もそれを発揮できれば間違いのない戦力と言えるでしょう。

闘莉王は小島卓スカウトとの名古屋時代の繋がりも効いたでしょうか。
さすがにスピードは落ちていますが、高さ・強さは申し分のない選手。
また、一試合一試合の勝ちに強くこだわる姿勢を体現してくれる選手でもあります。
昨季の名古屋でのプレーに衰えを感じるところもありましたが、昨季オフから公式戦だけでなくプロチームでのトレーニングからしばらく離れていたことを考えると仕方ない面もあったように思います。
今季の始動から体を作り、キャンプを通して開幕を迎える中でどこまで状態を上げていけるかがポイントになるでしょうか。
CBだけでなく、リードされた時のパワープレーにも持ち味を出せる選手ですし、チームに好影響を出せることを願いたいところ。

・・・というような、期待する点はものすごく分かりやすい。
一方で、昨季の中心選手を放出して行うような補強だったのかというところは議論になる点でしょう。

大黒と山瀬ではポジションが異なりますが、年齢的なことや年俸なんかを考えると対象になるところですし。
しかしFWは人員過剰なところがあるし、サイドハーフは逆に手薄。中盤のレギュラー格で昨季から残っているのは吉野くらいですし、加入した選手も中盤は若手選手が多くて、バランスはあまり取れていない印象がします。
総合的に考えると、やはりチームとしての状況を踏まえて、今季昇格を狙ってはいるものの、もし昇格できなかった時のことを強く見据えているように感じますね。
若手選手に関する項で書いたことが、ここにも関係してきますが。


「二面性」をどう見ていくのか

前提となる話として、京都というクラブが置かれている立場は微妙なものがあります。
スポンサーについてくれている企業は大きなもので、特にメインスポンサーの京セラの影響力が大きいのは周知の事実。一方で地域における存在感は低く、J2にいることによって余計に弱い立場になっているように感じます。
資金提供をしている側からすれば、元を取りたいと思うのは当然のところです。

しかし、毎年のように「J1昇格」を期待されるが故に、チーム作りに弊害が出てしまったのも事実。
大きな企業がついているとは言っても、資金的にJ2で最上位に行くようなクラブかと言うとそうでもないのが京都の位置づけです。以前は最上位だったかもしれませんが、今はもう違います。他のクラブも様々な積み上げを行い、競技面でも運営面でも進歩を遂げていっているわけですから。
そうなると、昇格を狙うためにはしっかりしたチーム作りを行うことによって固い基盤を作り上げて挑んでいく必要があります。
京都にとって、大木武監督体制というのは一つの勝負でした。ある程度良い形にはなっていましたが、様々な要因によって、残念ながら昇格を果たすことはできませんでした。
本来ならば、もう一度基盤を整え直し、タイミングを見計らって資金投入して昇格を目指すべきところでした。
ただ京都は外圧もあったり、内部での対立構造もあったりしたのか、そういった道は取らず(取れず?)、歪みを抱えたまま昇格を狙おうとして混乱に陥った2年がありました。

生え抜きの有望選手も流出するし、スポンサーからの資金援助も徐々に落ち込んでいくし・・・という中で、セオリーから外れることは承知で、赤字覚悟の補強を敢行したのが昨季でした。
当然しんどいところはありましたが、考え得る限りでは上々のシナリオでプレーオフにまで至ることはできましたが、これも残念ながら昇格はできず。

昨季は『賭け』に失敗したわけです。実際に赤字も出たようですし。
ここで再び、赤字覚悟で補強費を投じるというのは、本気で昇格を狙うにはちょっとしんどい選択ではないかと感じたところ。
その中で実際に行われているのが、大きくモデルチェンジをするかのような退団・補強動向なだけに違和感はさらに募りました。
戦力的には個人能力の高い選手が多いですし、ハマってくれれば・・・というところですけど、どう転んでくれるかは分かりませんし。


昨季の主力、特に一定年齢以上の選手の退団。
大黒と闘莉王という、サッカーに詳しくない人でも知っているようなビッグネームの加入。
地元選手を中心にした若手有望選手の加入。
生え抜き選手の期限付き移籍の多さ。

こういったところから一つ腑に落ちたことがあります。
「今年はアリバイ作り」
というちょっと言うのが憚られるような話です。

もちろん今季昇格を狙っていないわけではないはずです。
なんとかJ1に行きたいというのは皆が共通して願っているところでしょうから。
ただ、そのためには昨季のままではしんどい部分が多かったですし、2年連続となるギャンブルを行う必要がある。
でも失敗してジリ貧になってしまうことは避けたい。

今季赤字を出した場合、来季は必ず黒字化することが求められます。
そのために、年俸が比較的高い選手をあらかじめ整理しておく。
同時に若手選手の経験の場を優先させるように、期限付き移籍をフルに利用しつつ、新卒や他クラブからも有望な若手選手を加入させ、来季以降への種蒔きも行う。
一方で、周囲(スポンサーであったり地域であったり)にも「本気度」をアピールするためにビッグネームを加入させる。もちろん彼らの効果がプレー面で良いように出ることを期待しているのが第一に来ていると思いますが、副次的な要素も重要なはず。集客・話題に繋がるところもあるでしょうか。
(サッカーにそれほど興味がない人と喋る時に、山瀬や菅野でも分かるかどうか・・・となるわけで。。。)
また、今季昇格できなかったとしても、ビッグネームを加入させるために資金を使うなど、精一杯やったことを感じさせることができるというのもあります。さらに、次の年は絶対に赤字を出せないという強い名目を出せるので、若手路線への転換も周囲を納得させられやすいという。

リスクマネジメントを行っておくのは組織として当然。
迷わせるのは、今リスクを取っていることがメインなのか、リスクケアのための策がメインなのかが評価しづらいことがあります。
ポジションや選手の年齢・実績のバランスを見た時に、今のリスクの取り方が、競技面からすると危うさを抱えているように思えるので。

むしろ、来季若手選手主体で臨むことを考えた時の方が、バランスも良さそうに見えるし、将来性も当然秘めているように思えるところも。
布部監督もそっちの方がやりやすいし、強みも出せるんじゃないかな、と。
もちろん今季昇格を果たせば、J1で戦えるようにさらに戦力を上積みできるので、また状況は変わってくるのでしょうけれど・・・
また、今季のメンバーで昇格を果たし、期限付き移籍で経験を積んで成長した若手選手との融合でより高みを目指す・・・というのが最上のシナリオであることは言うまでもありません。現実的かはさておき。

・・・ですので、今自分自身でもいろいろ考えが整理できてないのが正直なところです。
つらつらうだうだ書いといてなんやねん、って感じですけど(笑)
ほんとはポジションごとに戦力状況まとめて・・・とかって考えてたのに、書いているうちにどんどん外れていってしまいましたw
でも、今季はそれくらい、考え込んでしまうといろいろ深みにハマっていきそうなところがあります。
いろいろムリヤリ消化している思いもありますし。

今季はどんなシーズンになるでしょうか。

でも結局、1試合1試合を楽しんでるだけになるんですけどね、きっと。