「善にして有用なものすべては、極端に至れば、

悪にして有害なものになりえるし、しばしば実際に悪にして有害である」

ウラジーミル・レーニン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第二節  何が勝利してきたのか

 

 

「永続敗戦」という概念は、「かつての敗戦の責任をこの国は

対内・対外的にほとんどとってこなかった」批判の踏襲

 

 

この批判に真正面から答えなければならなかったが

繰り返し挫折、だらだら続いてきたのが、「戦後」

 

 

 

「平和と繁栄」の共犯関係

 

 

これを継続させてきたものは、戦後日本経済の成長と

それによって、東アジアの日本の経済力が突出したこと

 

 

「繁栄」が昔日のものとなり、急激に「平和」も脅かされているのが

「平和」という価値が、非常に脆弱だったことを示している。

 

 

建前の「平和主義」や「不戦の誓い」

本音の「好機としての戦争」「核武装」

 

 

この欺瞞の解消を、左派・リベラルは避けてきた。

暗黙の合意は、「戦後」の終わりで崩れ、真実に直面せざるを得ない。

 

 

「絶対平和主義」は命を賭しても守るべき価値ではなく

実利的に、便利だから奉じられてきたにすぎない。

 

 

実利主義的な平和主義を清算しなければならなかったが

永続敗戦の権力者が強固で退廃しているため、安全保障問題を忌避した。

 

 

そのために「平和主義は日本社会の中心的価値として確固たるものになった」

という物語が放置され、批判者の勢力は思考停止に陥った。

 

 

思考停止が顕著に表れるのは、「唯一の被爆国である日本は・・」

という決まり文句に続くのは「いかなるかたりでも絶対的に核兵器に関わらない」

 

 

本来は二つあり、「核兵器を絶対的に拒絶する」と

「二度と再び他国から核攻撃されないように進んで核武装する」

 

 

この二通りの論理的可能性を引き受け

あえて選ばれる反核でなければ、思想的強度がない。

 

 

非核三原則や「唯一の被爆国」との強調は

国民を騙し、国民も進んで騙されてきた。

 

 

日本の保守勢力の主流派が、日米同盟・米軍基地・核の傘の必要性を

国民に納得させる義務を放棄してきた。

 

 

敗戦の責任から逃避した連中とその後継者は

国防の責任を引き受ける資格がない。

 

 

そのため「核兵器はあまりに残酷であるから嫌だ」

という国民感情を、柱に据えた。

 

 

ここに、永続敗戦レジームの中核層と平和主義者との

奇妙な共犯関係を見て取ることができる。

 

 

 

平和主義者であれ、戦後親米保守派であれ、「唯一の被爆国」という強調は

「核兵器を絶対的に拒絶する」に自動的に接続される。

 

 

この自動作用で「二度と再び他国から核攻撃されないよう」

と考えなくてすむが、これが永続敗戦レジームの真の狙い

 

 

この国は、負け戦の果てに「核攻撃を受けた」

こういう攻撃を、自ら招き寄せた。

 

 

しかし自動的な接続によって

原爆投下の責任と意味を塗り潰してしまう。

 

 

 

白井は「中国人民抗日戦争記念館」に行って

侵略・犠牲者に対して、中国国民は「怒り」以上に「恥ずべき」と捉える。

 

 

自称「ナショナリスト」たちが、原爆投下に対して

「恥ずかしい」とどうやら思っていない。

 

 

われわれは核兵器の実験台と道具にされ、

その経験は、悲惨さと同時に恥辱の経験でもあった。

 

 

「恥ずかしい」政府を持った自覚へと直結するため

「ナショナリスト」は、原爆投下を「恥辱」と感じない。

 

 

戦後、国民の窮乏が続いたならば、日本人の核兵器への態度は

ナチスの台頭のようなものであったかもしれない。

 

 

経済的成功によって、平和主義が支えられてきたが

「貧しい日本」が帰ってくれば、「国体の護持」も帰って来る。

 

 

 

 

マルクス・レーニン主義独特の見方は、けっこう面白い。

だがマルクス・レーニン主義が、思想的強度を持てる日が来るのだろうか。

 

 

その壮大な社会実験で、1億人ぐらい

人がなくなったのに、いつまでその命脈を保てるのだろう。

 

 

100周年とかなんとかはしゃいでいたが

これだけ人を殺してきて、そういう反省は微塵もないみたい。

 

 

思想というものは、自然科学や哲学と異なり

しばしば非常に脆弱なものとなる。

 

 

その典型が、マルクス・レーニン主義なんだけどなぁ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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