大地の咆哮 元上海総領事が見た中国/杉本 信行

外務省の元上海総領事が見たリアルな中国を描いた内容で面白い。


30年以上中国を見て来た筆者だからこそ分かる中国人の気質、文化、歴史、構造上の問題、台湾問題などが詳細に描かれていて、今の中国を知るには貴重な本だと思う。


特に筆者の考え・行動に共感した部分は、「草の根無償資金協力」という制度を使った小学校の建て直しプロジェクトに関する項だ。


今まで3兆円ものODAを注ぎ込んだにも関わらず日本と中国の関係が改善される気配もないが、この「草の根無償資金協力」で立て直された小学校が300校に登るという。中には、「日中友好小学校」と名づけられ立て直された小学校もあるということだ。そのほかにも医療などを含めると500件以上のプロジェクトと実施したということだ。


このことによって、「本来は中国自身が行うべき国内への援助」という意味で地方の現場サイドから感謝される支援となる。それが中国の政策当局も、日本の援助が中国の危機を未然に防いだことに気づき、日本の先見の明を認める日が来るだろう。従ってそういう形での対中ODAの継続は絶対に必要であり、それを増やしていくことが、まずは中国の安定、ひいては日本の安定に繋がると信じている。


素晴らしき高い視点と先を見越した行動に気骨な外務官僚の姿を見た。こういった素晴らしい官僚も中にはいるのだ。


中国の発展は世界にとって脅威だと思うので、今後も中国の経済発展・国内政治・外交などの動きは注意深くウオッチして行こう。