いろう増設のあと退院後は、食事介助もなくなったので座位もさせなくなっていた。
ギャッジのみの寝たきりだった父。

寝たきりは、家族の怠慢から始まる。

そう。寝かせきりのほうが、介護者は、楽。

しかし、父は、食事をとらないので一日にメリハリがない。

なので一日一回でも体を起こすことにした。

起立性低血圧なので、はじめは、5分から少しずつ時間を延ばしていった。
横について父を支えた。

毎日続けていると、だんだん座位もしっかりしてきた。
話しかけると笑顔もたくさん出てきた。はっきりとした言葉になってないが、発語も多くなってきた。

寝たきりになると肺がペッしゃんこになるらしい。

なので体を起こし、しっかり痰吸引をするようになってから、ずっとエア入りが弱いと言われてきたが、エア入りもよくなった。

訪看さんが驚く程、肺音もクリアになってきた。
なんかいい方向に向いて来た。

五月に一度院内感染した菌が強くなり高熱が出て一週間ほど入院した。
呼吸器科が満室で、同じ階の西病棟へ。
こちらの病棟でこの病院で初めてシャワーをしてもらった。

前年の九月、初めてこの病院に搬送されてから実に八ヶ月ぶりのシャワーだった。

入浴は依然、高熱が怖くて、再開出来ずにいた。

その夏から、訪看の主任さんが、シャワーキャリー(訪看ステーションの所有物)を利用して、自宅でシャワーすることを提案して下さった。

この主任さんも父にとっては、注射を提案してくれた泌尿器の先生と同様、私にとっては、救世主のような人だった。

過去に訪看を利用していた方が、寄贈されたシャワーキャリー。

初秋まで、ずっとお借りしていた。
今も訪看さんで活躍してるだろう。

余命宣告され最悪の状態だったあの頃、もうシャワーも無理だと思っていた。

借りたシャワーキャリーに、いつも『ありがとうね』と言いながらタオルで拭いていた。