長年医師をしていると、色々な患者さんと会話することになりますが、時にはこちらが驚くような印象に残っている話もあります。

本日はその中の一つのエピソードをご紹介したいと思います。


これは10年以上前、私が研修医の時のエピソードです。

当時循環器内科で研修していた私は指導医と一緒に不整脈の患者さん(70歳くらいの男性)の検査をしていました。

診断結果は心房細動(心房が細かく拍動する病気)で、不整脈をコントロールする治療と同時に血栓症予防の薬であるワーファリンを提案しました。


このワーファリンという薬は納豆と一緒に服用すると効果が無くなってしまうので、納豆は食べないでください

と説明したところ、患者さんから

 

 

「先生申し訳ない、私は納豆すごい好いとうけんね。この治療だけはちょっと無理やね。納豆やめる以外やったら手術でもなんでもお願いします。」(当時私は福岡で研修していたので患者さんは博多弁でした)びっくり

 

え。そこですか!?
納豆にそこまで思い入れのない私は心の中でそう思い、困った顔で指導医を見たところ、指導医が脳梗塞や心筋梗塞のリスクなどについても説明しましたが、患者さんは


「いや、納豆が食べられないなら死んでもいいけん。病院の責任を問う様な事は絶対にしませんから。娘が証人になる」


と言われガーン、同席していた娘さんの承諾も得て、効果の落ちる別の薬剤にした事を覚えています。
現在は、他にも良い抗凝固薬が色々出てきているので、そんなに困らないとは思いますが、それにしても、そこまで納豆に思い入れがあるとは。。ase
同じ治療でも、患者さんの受け取り方は様々だということを実感したエピソードでした。


(文責:[医師部門] 江夏 徳寿  [理事長] 塩谷 雅英)

 

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