指輪 | もしも君が迷ったなら

もしも君が迷ったなら

思いついた言葉を詩に。思いついたストーリーを小説に。

 あの日、何か言えていたなら、何か行動できていたら、何か変わっていたのだろうか?



 俺は小さな町のはずれにある古い店に足を踏み入れた。店があることは知っていたが、店には初めて入る。
 なぜ急に入りたくなったのかは分からない。
 その店はいわゆる骨董屋で、いろんなアンティークが所狭しと置いてあった。
「何かお探しかい?」
 出てきた店主は人のよさそうなおじいさんだった。
「いえ、見てるだけです」
「そうかい。ゆっくり見て行っておくれ」
「はい」
 そう言うと店主は店の奥に入って行った。俺以外に客はおらず、防犯意識もまったくない。事件すら起こらない小さな町だからかもしれない。
(万引きされたらどうするんだろう?)
 思わずそんなことを考えてしまう。もちろん俺は万引きする気なんてさらさらない。
 店内を見ていると、アクセサリーが目に入った。その中の一つの指輪に目が留まる。
『こんなの欲しい!』
 ふと彼女の声が聞こえた。それは昔、付き合っていた彼女と一緒にテレビを見ていたときだった。映っていた古い指輪を見て、彼女がそう言った。それはアンティークで、そう簡単に手に入るものじゃないと思った俺は「指輪なら違うの買ってやるよ」とごまかした。
 何であの時、探そうともしなかったのだろう?こんなにも近くにあったのに・・・・・・。
「すいませーん!」
 俺が店主を呼ぶと、ゆっくりと店の奥から顔を出した。
「何かあったかね?」
「あの、この指輪のサイズっていくつなんですか?」
 俺が指差した指輪を見て、店主は唸った。
「うーん。多分九号くらいかな?」
 九号。確か彼女の指輪のサイズだったはず。
「あの、これください」
 自分でも信じられないくらい早さでそう言っていた。


「ありがとう」
 意外と安価だったそのアンティークを受け取り、俺は店を出た。
「ちょっとちゃちくね?」
 店を出てから、包装紙に文句をつけてみる。だけど何だか笑ってしまう。


 気がつくといつもデートに使っていた公園に足が向いていた。相変わらず公園は人の気配もなく、ただ町中を飲み込んでしまうかのような夕日が地平線に沈んでいた。
『綺麗だね』
 また彼女の声が蘇る。あの頃、ただずっと夕日が沈み行くのを見守っていた。そんな時間が心地よくて、ずっと続くものだと思っていた。
 隣に彼女がいないだけなのに、何でこんなにもぽっかりと穴が開いたようなのだろう?


 夕日が沈み、しばらくすると紺色の空に星が瞬いた。いつもなら綺麗だと感じられるこの景色も何か物足りない。
 やっぱり彼女がいないとダメなんだ。何もかも、ガラクタに思えてくる。
 こんなにも大切な人を、失くしてから気づくなんて・・・・・・。
「馬鹿だ・・・・・・俺」
 こんな自分が悔しくて悲しくて涙が溢れた。夜空の星が滲んで光った。



 世界が抜け殻に思えた日。俺はただ彼女との優しい記憶を思い出す。柔らかくて、暖かくて、優しい記憶。
 もう会えない事は十分分かっている。それでもなぜだか希望を持ってしまう。いつかきっと彼女に会えると。
 俺は買ったばかりの指輪が入った袋を手の中で優しく包んだ。


 いつか君に会うことができたなら、この指輪を渡そう。あの時言えなかった言葉と共に。



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久々インスパイア。と言うか更新自体あまりしてないですが・・・・。


今回は↓此方。

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このアルバムい入っている【指輪 】と言う楽曲です。(曲名クリックで歌詞が出ます


これはエルレの中でも名曲かと。

メロディと歌詞の世界が物凄く切なさを醸し出してて、胸がキューってなります(個人的に


今回、インスパイアするにあたり、詞の世界を壊さないように曖昧な表現も多々使いつつ。


何で別れたのかとか、彼女はどこにいるのかとか、そもそも彼女は生きてるのか?とかはご想像にお任せしますw


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詩も書きたいなぁ(。-`ω´-)